尿による簡便な検査で動脈硬化リスクを評価 尿エクソソームのタンパク質を測定 動脈硬化の隠れたリスクが分かる

2022.01.05
 大阪大学は、尿で動脈硬化の隠れたリスクを評価できる指標を発見したと発表した。

 発見したのは、動脈の老化現象ともとれる動脈硬化の隠れたリスク因子であるアルドステロン作用(ミネラロコルチコイド受容体活性)の測定を可能にする指標。

 尿エクソソームのタンパク質を測定することで、これまで測定困難であったミネラロコルチコイド受容体活性が評価できることを明らかにした。

 今回の手法を臨床応用できれば、尿による簡便な検査で、高血圧や2型糖尿病、肥満の動脈硬化リスクを評価できるようになる可能性がある。

ミネラロコルチコイド受容体の活性を測定する方法が必要

 大阪大学は、尿中のエクソソームを調べることで動脈硬化のリスク因子を評価できる可能性を明らかにした。

 アルドステロンは副腎から分泌されるホルモンであり、血圧調節などを行っている。このアルドステロンが、ミネラロコルチコイド受容体に結合し、受容体が過剰に活性化することで、動脈硬化や血圧上昇、血液のミネラルバランスの異常を引き起こすことが知られている。

 アルドステロンが過剰になる病気、原発性アルドステロン症では、普通の高血圧の患者より、動脈硬化に関連する脳や心臓の病気を発症しやすいことが知られている。

 原発性アルドステロン症をはじめとした高血圧、肥満、2型糖尿病の患者で、これまでの診療ではアルドステロン濃度の測定は可能だったが、アルドステロン濃度が正常でも、ミネラロコルチコイド受容体の活性も正常とは限らないことが分かっている。

 しかし、ミネラロコルチコイド受容体の活性を測定する方法がなかったため、医師は経験と複数のデータを組み合わせて、動脈硬化リスクを予想していた。

尿中のエクソソームに含まれるタンパク質がミネラロコルチコイド受容体活性の指標に

 研究グループは今回の研究で、実際の患者の尿中のエクソソームに含まれるナトリウムチャネルタンパク質(塩分を調整するタンパク質)の量が、血液中のアルドステロン濃度と相関すること、さらに、ミネラロコルチコイド受容体活性を阻害する薬の内服により、このナトリウムチャネルタンパク質の量が低下することを見出した。

 つまり、尿中のエクソソームに含まれるナトリウムチャネルタンパク質の量は、ミネラロコルチコイド受容体活性をあらわす指標であることを発見した。

 この手法は、体を傷つけることなく、尿を用いた動脈硬化の新しいリスク評価因子になりうると考えられる。さらに、ミネラロコルチコイド受容体阻害薬による治療の効果判定や、高血圧治療薬を選択する際の診断の補助に用いることが期待されるとしている。

 研究は、大阪大学医学部附属病院の早川友朗特任助教(常勤)、大学院医学系研究科の下村伊一郎教授(内分泌・代謝内科学)、福原淳範・寄附講座准教授(肥満脂肪病態学)らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Journal of Endocrinology」に掲載された。

新規アルドステロン作用測定方法
尿に含まれるエクソソームを調べることでリスク因子を評価

出典:大阪大学、2021年

糖尿病や肥満の患者で人はミネラロコルチコイド受容体活性が上昇

 アルドステロンは副腎という臓器から分泌されるホルモンで、ミネラロコルチコイド受容体に結合し、受容体を活性化することで作用する。たとえば、腎臓では、ミネラロコルチコイド受容体はナトリウムチャネルという塩分調整タンパク質を介して、尿に排出される塩分・水分を調節し、人体のミネラルバランスや血圧をコントロールする働きがある。

 しかし、2型糖尿病などの生活習慣病や肥満の人は、ミネラロコルチコイド受容体活性が不必要に高まり、人体各所で過剰作用することで動脈硬化を悪化させていると考えられている。これまでは、ミネラロコルチコイド受容体活性を測定するために、腎臓のナトリウムチャネルタンパク質を測定したくても、腎臓の組織をとってくる必要があるため、日常診療では実現困難だった。

 そこで研究グループは、細胞から放出されるエクソソームという小胞に着目し、このなかに含まれるタンパク質の中でミネラロコルチコイド受容体の活性指標になる因子を探索した。

 そして、γENaC(γ-epithelial sodium channel)というナトリウムチャネルが血中のアルドステロン濃度と良好な相関を示すことを発見した。

 さらに、実際の診療でミネラロコルチコイド受容体阻害薬の内服治療を受けた患者では、この指標が低下していることを確かめた。この指標は、ミネラロコルチコイド受容体阻害薬による治療の効果判定にも使用できる可能性がある。

 「今回の研究は、人の検体で測定可能であり、日常診療で用いられる既存の検査手法に置き換わる可能性があり、臨床応用できる素因を有した研究です。今後の研究の進展によって、たとえば高血圧、肥満、糖尿病をお持ちの患者さんに、実際に診療現場で測定を行い、患者の動脈硬化リスクの評価や治療での改善を確認する評価指標として社会還元されることが期待されます」と、研究グループでは述べている。

大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
大阪大学大学院医学系研究科 肥満脂肪病態学
γENaC/CD9 in urinary extracellular vesicles as a potential biomarker of MR activity (Journal of Endocrinology 2021年11月10日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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