2型糖尿病患者の大腸がんリスクは1.47倍 喫煙歴や内視鏡検査の有無も影響
2型糖尿病は大腸がんのリスク因子として報告されているが、患者特性によって大腸がんリスクが変化するのか否かという点は十分研究されていない。また、米国において2型糖尿病や大腸がんは、社会経済的地位が相対的に低い集団において、疾病負担がより強く生じていることが示唆されている。これらを背景としてLawler氏らは、米国南部のアフリカ系米国人が多く含まれている地域住民対象コホート研究(Southern Community Cohort Study;SCCS)のデータを用いた検討を実施した。
SCCSは2002~2009年に研究参加登録が行われ、2018年までに3回の追跡調査が実施されている。約8万5,000人の研究参加者から、追跡期間が2年未満、参加登録時点でがん既往歴あり、30歳未満での糖尿病発症などの該当者を除外し、5万4,597人〔年齢中央値51歳(四分位範囲46~58)、女性64%、アフリカ系米国人66%〕を解析対象とした。
追跡調査で大腸がんの診断が記録されていたのは、糖尿病群では2万5,992人中289人、非糖尿病群では2万8,605人中197人だった。年齢、性別、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒習慣、収入、大腸がん家族歴、医療保険加入状況などを調整後、糖尿病群では大腸がんリスクが有意に高いことが示された〔ハザード比(HR)1.47(95%信頼区間1.21~1.79)〕。
患者特性で層別化したサブグループ解析の結果、喫煙歴のない糖尿病患者では有意なリスク上昇が認められなかったが〔HR1.10(同0.81~1.48)〕、前喫煙者〔HR2.07(1.41~3.06)〕や現喫煙者〔HR1.62(1.14~2.31)〕はリスクが有意に高く、交互作用が有意だった(交互作用P=0.04)。性別や人種/民族、肥満の有無、収入の多寡については、有意な交互作用は示されなかった。
内視鏡によるスクリーニングを受けたことのない糖尿病患者も、大腸がんリスクがより高いことが明らかになった〔スクリーニング歴ありはHR1.18(0.92~1.53)で非有意であるのに対して、スクリーニング歴なしではHR2.07(1.16~3.67)〕。
また、より最近になって糖尿病と診断された患者も、大腸がんリスクが高いことが示された〔罹病期間が5~10年未満の患者を基準として2~5年未満ではHR2.55(1.77~3.67)〕。この点について論文の考察には、「恐らく、近年になって内視鏡によるスクリーニングが積極的に行われるようになったために、早期の大腸がんの診断件数が増えたことによるものと考えられる」と記されている。
著者らは、糖尿病と大腸がんリスク上昇との関連のメカニズムとして、「高血糖や高インスリン血症などの関与が想定される」と述べている。また、「糖尿病患者を大腸がん検診機関に紹介するなどの医療連携を推進することが、特に糖尿病罹病期間の短い患者において、大腸がんの予後改善につながるのではないか」としている。
[HealthDay News 2023年11月15日]
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