中・高強度の運動(MVPA)が肥満2型糖尿病のCKDリスクを低下 10分未満の短時間の運動でも効果が
身体活動量が多いことが、2型糖尿病患者のCKDリスク低下と関連していることは既に報告されている。しかし、過去の研究の多くは身体活動量を自記式アンケートによって把握しており、また、持続時間が10分に満たない短時間の身体活動の影響はよく分かっていない。Liu氏らはLook AHEAD研究のデータを用いてこれらの点を検討した。
Look AHEAD研究は、過体重・肥満2型糖尿病患者への生活習慣介入または教育的サポートの介入効果を検討した研究で、参加者の約半数(51.1%)には3軸加速度計が支給され身体活動がモニタリングされていた。今回の検討では、身体活動に関するデータ等がそろっていて、ベースライン時点でCKD未発症だった1,746人を解析対象とした。
解析対象者の主な特徴は、平均年齢58.0歳、女性58.7%、BMI35.5、HbA1c7.1%、eGFR93.2mL/分/1.73m²であり、総MVPAは328.8分/週で、そのうち1機会の持続時間が10分未満のMVPAが266.8分/週だった。中央値12.0年の追跡で、567人がCKDを発症した。
交絡因子(年齢、性別、人種、BMI、喫煙・飲酒習慣、糖尿病罹病期間・家族歴、空腹時血糖値、HbA1c、eGFR、尿中アルブミン/クレアチニン比、教育歴、雇用状況、世帯収入)を調整後に、総MVPA、持続時間10分未満のMVPA、持続時間10分以上のMVPAそれぞれの累積時間と、CKD発症リスクとの関連を検討した。
解析の結果、MVPAの累積時間が100分/週多いごとに、CKD発症ハザード比(HR)が有意に低下するという逆相関が観察された。具体的には、総MVPAはHR0.91(95%信頼区間0.86~0.96)、持続時間10分未満のMVPAはHR0.92(同0.86~0.98)、持続時間10分以上のMVPAはHR0.81(0.72~0.91)だった。
また、各MVPAの累積時間の四分位で4群に分けて比較した解析でも全て、累積時間が長いほどCKD発症リスクが低いという、有意な傾向性が確認された(傾向性P値は、総MVPAが0.001、持続時間10分未満のMVPAは0.010、持続時間10分以上のMVPAは0.001未満)。
次に、ベースライン時と4年目の身体活動に関する記録があり、かつ4年目までにはCKDを発症しなかった1,237人を対象とする縦断的解析を実施。この対象のうち376人が最終的にCKDを発症していた。4年間でのMVPAの変化とCKD発症リスクとの関連を、前記の交絡因子およびベースラインのMVPAを調整後に検討。
すると、MVPAの減少幅が少ない、もしくは増加していた第4四分位群は、第1四分位群(MVPAが最も大きく減少していた群)に比べてハザード比の有意な低下が観察された〔総MVPAについてはHR0.67(0.47~0.97)、持続時間10分未満のMVPAはHR0.67(0.48~0.96)、持続時間10分以上のMVPAはHR0.71(0.51~0.98)〕。
著者らは、「われわれの研究結果は、1機会当たりの持続時間にかかわりなく、MVPAの多さが過体重・肥満2型糖尿病患者のCKDリスクを押し下げる可能性を示しており、公衆衛生上重要な意味を持っている」と述べている。
[HealthDay News 2024年2月7日]
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