SGLT2阻害薬が糖尿病性腎症患者のBNPを改善 心負荷軽減に関与する可能性 横浜市立大学ら

2026.07.09
 横浜市立大学と川崎医科大学の研究グループは、多施設共同研究において、SGLT2阻害薬の心負荷軽減効果について、日本腎臓学会および日本腎臓病協会が構築した慢性腎臓病患者包括的縦断データベース(J-CKD-DB-Ex)を活用し、リアルワールドデータ解析による検討を行い、その結果を報告した。
 糖尿病性腎症患者においてSGLT2阻害薬が、他の糖尿病薬と比較して心負荷の指標であるB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の改善に寄与すること、その効果は幅広い患者層に認められることを新たに見出したという。

 現在、日本の心不全による入院患者は年間30万人弱にのぼっており、その予防法が課題となっている。そうした中、慢性腎臓病(CKD)患者は心不全を高率に発症する予備軍として最近注目を集めている。糖尿病性腎症はCKD患者の多数を占めており、SGLT2阻害薬が腎保護効果を有することはこれまでの研究で明らかになっている。しかしながら、糖尿病性腎症患者において、心負荷の軽減にも役立つかどうかを実際の血液検査結果で検証した研究は存在していなかった。

 そこで研究グループは、日本全国24施設から集積されたJ-CKD-DB-Exのデータを解析し、1,818人の糖尿病性腎症患者を対象に、心負荷指標である血液中BNP値を糖尿病薬開始前後で比較検討した。BNP(B型ナトリウム利尿ペプチド)は心臓から血液中に分泌されるホルモンであり、心筋にかかる血圧が高ければ高いほど多く分泌されるため、心臓の負担を測る指標として用いられる。

 解析の結果、SGLT2阻害薬開始後は、その他の糖尿病薬開始後よりもBNP値低下がより顕著に認められた。具体的には、BNP値が10%以上低下した患者の割合は、SGLT2阻害薬使用患者で50.5%であったのに対し、他の糖尿病薬使用患者では38.6%であった。こうした差は年齢、性別、腎機能などの患者の条件によらず観察された。また、SGLT2阻害薬開始後のBNP値低下の程度は、利尿薬を併用している患者では併用していない患者よりもわずかであったものの、その他の年齢、性別、腎機能などの条件に左右されることなく認められた。

 研究グループは本研究の結果について、糖尿病性腎症をもった患者において糖尿病薬を選択する際、役に立つ可能性があるとし、糖尿病性腎症を含めたCKD患者においては、腎疾患の進行のみならず、心不全への波及を防ぐことも念頭に置く必要があると結論付けている。

 本研究は、横浜市立大学大学院医学研究科病態制御内科学の永広尚敬医師、涌井広道准教授、田村功一主任教授、循環器内科学の小西正紹准教授と、川崎医科大学腎臓・高血圧内科学の長洲一教授らの研究グループによって行われた。研究成果は2026年6月15日付けで「Diabetes Research and Clinical Practice」オンライン版にて公開された。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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