成人糖尿病患者の4人に1人が中等度以上の難聴を有する 60歳未満や低・中所得国でより顕著

糖尿病の合併症として、微小血管障害や神経障害を介した聴力への悪影響が指摘されている。しかし、聴力レベル40dB HL以上とされる中等度から重度の難聴の有病率や、年齢、罹病期間、社会経済的要因によるリスクの差異についてはこれまで十分に特徴づけられていなかった。
そこで研究グループは、糖尿病および前糖尿病の成人における中等度から重度の難聴の有病率と相対リスクを定量化し、年齢や国の所得水準、罹病期間といった要因が与える影響を調査するため、システマティックレビューとメタ解析を実施した。
解析対象として、PubMed、Scopus、Web of Science、SPORTDiscus、CINAHLの各データベースを用いて、2000年から2025年までに発表された観察研究を検索した。抽出された3,490件の文献のうち、糖尿病または前糖尿病患者の聴力閾値を報告している29件の研究が基準を満たした。これらの研究のほとんどは2型糖尿病を対象としたものであり、前糖尿病患者を含んでいたのは1件のみであった。
解析の結果、23件の研究(対象者合計5,221例)から算出された中等度から重度の難聴の統合有病率は24%(95%CI:19~30%)であった。さらに対照群との比較を行った11件の研究のデータを統合したところ、糖尿病患者における難聴のリスクは対照群に対して約2.4倍に上昇していることが示された(OR 2.41、95%CI:1.62~3.60)。
サブグループ解析において年齢別のリスクを比較したところ、60歳未満では難聴のリスクが有意に上昇していた(OR 3.03、95%CI:2.17~4.22)のに対し、60歳以上では対照群との間に有意なリスクの上昇は認められなかった(OR 1.52、95%CI:0.72~3.22)。
各国の所得水準に基づく解析では、高所得国(対照群に対するOR 1.78、95%CI:1.05~3.02)に比べ、低・中所得国では難聴リスクの上昇がより顕著であった(同OR 4.51、95%CI:2.43~8.40)。
糖尿病の罹病期間に関しては、罹病期間が10年未満の患者において難聴リスクの有意な上昇が認められた(対照群に対するOR 2.68、95%CI:1.61~4.47)。
なお、解析においては小規模研究の影響(Eggerの検定によるp=0.019)が検出されたが、感度分析により結果の頑健性が確認された。
本研究の結果から、成人糖尿病患者の4人に1人が臨床的に有意な難聴を有しており、そのリスクは特に60歳未満や、低・中所得国において顕著であることが示された。研究グループは本結果について、日常的な糖尿病ケアの枠組みの中に、定期的な聴力検査を組み込むことの重要性を支持するものであると結論づけている。




