【新型コロナ】うつ・不安・ストレスなど「精神的苦痛」が新型コロナ長期化のリスクを46%高める
メンタルヘルスの不調は多くの疾患の転帰に影響
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、新型コロナに感染した米国成人の約20%は、新型コロナに関連する症状である疲労、ブレインフォグ、呼吸困難、心臓の機能低下、神経症状、消化器症状などが感染後4週間以上続く。
新型コロナが重症化すると、後遺症のリスクを長期にわたり高めることが知られているとが、軽症の人であっても後遺症のリスクは長期におよぶ可能性がある。患者を衰弱させる身体症状や精神症状は、感染の数ヵ月後まで、場合によっては数年続く可能性もあり、どのような特性が長期にわたる後遺症の発症に関連しているかについてはよく分かってない。
一方、メンタルヘルスの不調は、多くの疾患の転帰に影響をもたらし、インフルエンザや風邪など急性気道感染症でも、感染症の重症化や症状の長期化と関連していることが知られている。過去の研究で、精神的苦痛は、ライム病などの感染症の慢性症状、慢性疲労症候群、線維筋痛症などとも関連していることが示唆されている。
これらは、新型コロナの長期化にともなう症状にも似た点があり、うつ病などの精神疾患は、入院などの新型コロナの重症化リスクを高め、危険因子のひとつと考えられるという報告もある。
5万4,960人の心理的苦痛を調査
そこで、米国のハーバード公衆衛生大学院栄養学部の環境衛生学部のアンドレア ロバーツ氏らは、新型コロナ感染前の心理的苦痛が、新型コロナの症状の長期化にもたらす影響を調べるために、3件の大規模な前向きコホート研究(看護師健康研究II、看護師健康研究III、若年者を対象としたグローイングアップトゥデイ研究)のデータを解析した。
調査の開始時に、参加者の心理的苦痛について調査を行い、うつ病、不安、新型コロナに対する心配、知覚されたストレス、孤独感などについて測定した。参加者はベースライン時に新型コロナに感染しておらず、2020年4月から2021年11月まで追跡して、定期的な調査を行った。
登録された合計5万4,960人の参加者のうち、新型コロナに感染したのは6%(3,193人)だった。研究グループは、参加者の新型コロナの症状と期間などについて調査した。
精神的苦痛は新型コロナの長期化に強く関連
新型コロナに感染し、長期化した人とそうでない人を比較した結果、新型コロナ感染前のうつ病、不安、心配、ストレス、孤独感などの精神的な苦痛は、新型コロナの長期化リスクを32%から46%高めることに関連していた。
これらのタイプの心理的苦痛は、新型コロナの長期化による日常生活障害リスクを15%から51%高めることにも関連していた。
なお、苦痛にともなう新型コロナのリスク増加は、喫煙などの不健康な健康行動や喘息などの身体的健康状態とは関係なくみられたという。
「新型コロナに感染する前の精神的苦痛が、新型コロナの長期化に、強く関連していることが示され驚いています」と、同大学院栄養学部のシーウェン ワン氏は言う。
「精神的苦痛は、肥満、喘息、糖尿病、高血圧などの身体的健康リスク要因を上回り、強く新型コロナの長期化と関連していました」。
身体に加えて精神的な健康にも配慮する必要が
「今回の研究は、これまで知られているなかで、広範囲にわたる社会的および心理的要因が、新型コロナの長期化と、新型コロナによる日常生活障害の長期化の危険因子であることを示す最初の前向き研究です」と、ロバーツ氏は言う。
「新型コロナが長引くリスク要因として、身体の健康に加えて精神的な健康にも配慮する必要があります。これらの結果は、メンタルヘルスケアの重要性に対する一般の意識を高め、それを必要とする人々に適切な治療を提供する必要性を強く示しています」。
「メンタルヘルスケアに取り組む臨床医の供給を増やし、医療へのアクセスを改善する必要性が強く示されています」としている。
Psychological distress before COVID-19 infection may increase risk of long COVID (ハーバード公衆衛生大学院 2022年9月7日)
Associations of Depression, Anxiety, Worry, Perceived Stress, and Loneliness Prior to Infection With Risk of Post-COVID-19 Conditions (JAMA Psychiatry 2022年9月7日)