【新型コロナ】高齢者のワクチン接種を高めるのはソーシャルキャピタル 社会参加・社会的結束・互酬性が重要

2021.09.28
 新潟大学は、予防ワクチンの接種を受けている割合の高い高齢者は、▼社会参加、▼社会的結束、▼互酬性の3つの社会参加(ソーシャルキャピタル)が高いことが明らかになった。
 また、社会参加の豊かな地域に住んでいる高齢者も、予防接種を受けている人の割合が高いことも分かった。
 今回は肺炎球菌ワクチンの接種についての調査だが、新型コロナのワクチンでも同様の研究を行う予定としている。

高齢者のワクチン接種を高めるために何が必要?

 新潟大学は、▼[社会参加]運動・スポーツや趣味などの会に月に1回以上参加している、▼[社会的結束]地域の人を信用または信頼している、地域に愛着がある、▼[互酬性]心配事や愚痴を聞いたり話したりする人がいる、病気で数日間寝込んだときに看病や世話をしてくれる人がいる――の3つの「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」がある65歳以上の高齢者は、それらがない高齢者に比べ、予防ワクチンの接種を受けている人がそれぞれ13%、5%、34%多いことを明らかにした。

 また、社会参加が豊かな地域に住んでいる高齢者は、個人の社会参加の有無に関わらず、社会参加が標準的な地域に比べ、予防ワクチンの接種を受けている人が3%多いことも明らかにした。

 研究は、新潟大学大学院医⻭学総合研究科国際保健学分野の齋藤孔良助教、菖蒲川由郷特任教授らの研究グループによるもの。今回は肺炎球菌ワクチンの接種についての調査だが、新型コロナのワクチンでも同様の研究を行う予定としている。

「社会参加」「社会的結束」「互酬性」の3つのソーシャルキャピタルのあると高齢者のワクチン接種は増える
社会参加の豊かな地域に住んでいる高齢者も高い割合に

出典:新潟大学、2021年

高齢者の「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」を評価

 肺炎は日本を含む世界中で高齢者の死因の上位を占める。肺炎球菌は、世界でもっとも多くの肺炎を起こしている菌だ。そのため、世界の多くの国々で高齢者の肺炎球菌ワクチンの接種に対する助成が行われている。

 しかし、日本では各自治体で肺炎球菌ワクチンの助成金の金額が異なり、このことが各自治体でワクチン接種率が大きく異なる原因になっている。助成金以外でワクチン接種率の向上につなげる方法をみつけることが重要になっている。

 研究グループは、「ソーシャルキャピタル」のある高齢者には、肺炎球菌の予防接種を受けている人が多いかを調べるため、日本老年学的評価研究機構(JAGES)が2016年10月から2017年1月に実施した、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者約18万人を対象とした、健康と暮らしに関するアンケート調査データを解析した。

 対象者に対して、過去5年間に肺炎球菌ワクチンの接種を行ったかどうかを尋ね、「ソーシャルキャピタル」を、▼社会参加、▼社会的結束、▼互酬性の3つの指標を用いて評価した。

高齢者の生活を高める3つの要素[社会参加・社会的結束・互酬性]

 「社会参加」は、スポーツ、ボランティア、趣味関係、学習・教養、特技・経験を他者に伝えるグループやサークルへの参加を月1回以上行っているかどうかで評価した。

 「社会的結束」は、地域の人々を信用または信頼できるか、地域に愛着をもっているかという質問に、「とてもそう思う」「まあそう思う」と答えたかどうかで評価。

 「互酬性」は、心配事や愚痴を聞いてあげる人がいるか、心配事や愚痴を聞いてくれる人がいるか、病気で数日間寝込んだときに看病や世話をしてくれる人がいるかという3つの質問のいずれかに「はい」と答えたかどうかで評価。

 地域のソーシャルキャピタルは、各小学校区または中学校区での高齢者の社会参加、社会的結束、互酬性の平均値とし、標準偏差の平均値が1以上の場合を社会参加、社会的結束、互酬性が豊かな地域、マイナス1以下の場合は少ない地域、マイナス1より大きくプラス1差以下の場合を標準的な地域とした。

 社会参加、社会的結束、互酬性以外で、ワクチン予防接種に関係する可能性のある年齢、性、教育年数、所得、家族構成、婚姻状況、もっとも長く就いた仕事の種類、地域の違い、各自治体の政策の違いの影響を取り除いた。さらに、個人の社会参加、社会的結束、互酬性の影響も取り除いた。

社会参加の多い地域に住むだけでも予防接種につながる

 その結果、「社会参加」「社会的結束」「互酬性」の3つのソーシャルキャピタルのある高齢者は、それらのソーシャルキャピタルがない高齢者と比べて、ワクチン接種を受けている人がそれぞれ13%、5%、34%多いことが明らかになった。

 また、個人的な社会参加があるかどうかに関わらず、社会参加の豊かな地域に住んでいる高齢者は、社会参加が標準的な地域に比べ、ワクチン接種を受けている人が3%多いことが分かった。

 「社会参加、社会的結束、互酬性の3つのソーシャルキャピタルのどれかがあることが予防接種につながり、社会参加の多い地域に住むだけで予防接種につながる可能性があります。個人または地域の社会参加、個人の社会的結束、互酬性を培うことで、高齢者の接種率を向上できる可能性があります」と、研究者は述べている。

 今回は肺炎球菌ワクチンの接種についての調査だが、新型コロナのワクチンでも同様の研究を行う予定としている。

新潟大学大学院医⻭学総合研究科国際保健学分野
Social capital and pneumococcal vaccination (PPSV23) in community-dwelling older Japanese: a JAGES multilevel cross-sectional study(BMJ Open 2021年5月18日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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