【新型コロナ】流行期の糖尿病死亡率は30%以上の大幅増加 糖尿病の超過死亡率も33%超 25~44歳の若年成人でもっとも上昇
パンデミック期の糖尿病関連の死亡率は30%以上の大幅増加
糖尿病は、新型コロナ感染症の重症化の重大な危険因子であり、感染は血糖コントロールの悪化につながる。重ねて、新型コロナのパンデミックは、糖尿病診療も大きく混乱させており、十分なケアの提供を受けられない糖尿病患者の増加が懸念されている。
そこで、研究グループは、パンデミック期の糖尿病関連の死亡の傾向を明らかにするために、米国疾病対策予防センター(CDC)国立衛生統計センターが運営する、米国人の出生と死亡に関する網羅的なデータを収載した「National Vital Statistics System(NVSS)」の糖尿病関連のデータを解析した。
研究は、中国の西安交通大学数学統計学部のJian Zu教授らによるもの。研究成果は、「eClinicalMedicine」に掲載された。
NVSSの2006年~2021年の糖尿病関連の死亡例を含む25歳以上の人口ベースのデータセットから、死亡診断書の原死因と二次死因(合併症など)に糖尿病が記録された死亡者を糖尿病関連の死亡と定義し、超過死亡率は2006年~2019年の死亡率から導き出された年齢別死亡率の観測値と期待値を線形および多項式回帰モデルで比較することで推定した。
その結果、約425万件の糖尿病関連の死亡例のうち、パンデミック期の死亡率は30%以上と大幅に急増したことが明らかになった。10万例あたり年齢別死亡率は、2019年の106.8から、2020年には144.1、さらに2021年には148.3に増えたことが示された。
新型コロナのパンデミック前の糖尿病に関連した年齢別死亡率は、2006年(116.1)から2015年(103.9)にかけて徐々に減少した後に、わずかな上昇が続いていた。
パンデミック期にすべての年齢層で糖尿病による死亡率の顕著な増加がみられたが、その多く65歳以上の高齢者グループで発生しており(76%)。男性(54%)が女性(46%)を上回った。また、人種的・民族的格差の拡大が観察され、ヒスパニック系の超過死亡率はもっとも高く(+67.5%)、非ヒスパニック系のアジア人(+50.1%)、および白人(+23.9%)を上回った。
糖尿病関連のパンデミック期の超過死亡率は、2020年は33.3%(95%CI 30.5~36.2%)、2021年は35.3%(95%CI 31.7-39.0%)と高かった。超過死亡率の増加は、2020年は15.3%(95%CI 13.2~17.4%)、および2021年は17.8%(95%CI 15.2~20.6%)となり、全人口の超過死亡率よりも高かった。注目すべきは、糖尿病関連の超過死亡例の約3分の2が、パンデミック時の新型コロナ感染に関連していたことだとしている。
さらに、糖尿病関連の死亡率のもっとも急激な上昇は若年成人(25~44歳)でみられ、超過死亡率はもっとも高く(2020年には+54.0%、2021年には+77.2%)、年平均変化率は37.1%(95%CI 26.2~48.9%)に上った。
コロナ禍で糖尿病に関連する超過死亡例が増えた原因は?
今回の米国の2006年~2021年の約425万件の糖尿病関連の死亡例を含む全国的なデータベースの横断研究により、新型コロナのパンデミック期に糖尿病に関連する超過死亡率が33%超に上ることが示された。新型コロナ感染が、観察された超過死亡率の上昇の主な原因であり、超過死亡全体の3分の2を占めた。
新型コロナのパンデミック期に、糖尿病に関連する超過死亡例が多かった原因として、研究グループは糖尿病と新型コロナの双方向の関連を挙げている。
「糖尿病は、新型コロナウイルス感染症の重症化、集中治療室への入院、および死亡の重大な危険因子です。新型コロナウイルス感染は、複雑な経路を介してインスリン抵抗性と血糖コントロールの悪化に寄与します。パンデミック期に、外出禁止令により、運動不足、テレビ視聴時間の増加、健康的な食習慣の減少、精神的ストレスの増加がもたらされ、糖尿病などの代謝性疾患が悪化し、新型コロナのリスクが高まったと考えられます。さらに、糖尿病関連の外来患者数と臨床検査の実施数は著しく減少し、糖尿病患者への医療提供にギャップが生じたことが示されています」と、研究グループでは述べている。