薬用マウスウォッシュによるうがいで2型糖尿病患者の血糖管理が改善 悪性度の高い歯周病菌種が減少 大阪大学
薬用マウスウォッシュによるうがいで糖尿病患者の血糖管理を改善
歯周病は歯茎に炎症が生じる疾患だが、近年、歯周病に罹患することで糖尿病にも悪影響が生じることが明らかになっている。歯科医院での治療によって、歯周病の改善だけでなく糖尿病の血糖管理も改善することも報告されている。
一方で、殺菌・消毒効果のある薬用マウスウォッシュが、2型糖尿病患者の口腔および全身状態におよぼす影響については不明だった。
そこで研究グループは、歯周病菌総数 6未満、HbA1c 6.5%未満、BMI30以上を除外基準として、大阪府内の糖尿病クリニックを受診中の38歳~84歳の2型糖尿病患者173人を対象に、6ヵ月間は水道水でうがいをし、その後の6ヵ月は歯周病菌に対する抗菌作用のあるグルコン酸クロルヘキシジンを含む薬用マウスウォッシュで1日3回のうがいをするよう指示した。
歯周炎に、毒性の強い「ポルフィロモナス ジンジバリス」「トレポネーマ デンティコラ」「タンネレラ フォーサイシア」という3種類の細菌が関連している。研究グループはこれらの歯周病原因菌について、各診療所で唾液を採取し細菌のDNAを抽出、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により赤色複合体(歯周病菌の集合体)の数を検出し、さらに血液サンプルにより測定したHbA1c値との関連を調べた。
その結果、薬用マウスウォッシュによるうがいを1日2~3回に行った161人の患者では、歯周病菌が大幅に減少し(P < 0.0001)、その一方で水道水によるうがいでは減少しなかった。
さらに、薬用マウスウォッシュでうがいをした68歳以下の比較的若い群では、歯周病菌が有意に減少し(P<0.05)、HbA1値が7.5%以上の群では7.4%以下の群と比較し、HbA1c値が有意に減少した( −0.05±0.08 対 0.12±0.05)。水道水によるうがいでは減少しなかった。
これらの結果は、薬用マウスウォッシュによるうがいが歯周病菌の数を減らし、とくに2型糖尿病の比較的若い患者の高血糖を改善するのに有用であることを示唆している。
とくにグルコン酸クロルヘキシジンを含む薬用マウスウォッシュは、口腔内にとどまり、長時間にわたり殺菌効果を発揮することで、歯周病菌が増えるのを防ぐ効果を期待できるという。この成分を含むマウスウォッシュや洗口液は、薬局などで購入できる。
不十分な血糖管理は、歯槽骨などの損失リスクの上昇と歯周炎の進行の両方につながっており、2型糖尿病と歯周炎は、密接に関連していると考えられる。歯周炎と糖尿病は、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子、酸化ストレスなどの炎症誘発性メディエーターの増加を通じて、機構的に関連している。
「歯周病の発症率は健常人よりも2型糖尿病患者で高いことが知られている。今回の研究で、2型糖尿病患者の主要な歯周病原菌種および血糖管理に対する薬用マウスウォッシュの効果を検証した」と、研究者は述べている。
「マウスウォッシュは、歯周組織に侵襲を与えずに簡単に使用できるセルフケア製品だ。グルコン酸クロルヘキシジンを含む薬用マウスウォッシュは、歯周病の原因細菌であるP. gingivalisに対して抗菌効果がある。今回の発見は、抗菌効果のある薬用マウスウォッシュで1日2回以上のうがいをすることが、歯周病や原因菌の抑制に役立ち、2型糖尿病患者の血糖管理の改善につながる可能性を示している」としている。
研究は、大阪大学大学院歯学研究科および口腔全身連関学共同研究講座の又吉紗綾氏や仲野和彦教授らによるもので、研究成果は、科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
大阪大学歯学部・大学院歯学研究科
大阪大学口腔全身連関学共同研究講座
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