糖尿病網膜症の検査と同時に肝臓の検査を実施 脂肪肝疾患による線維症を発見する効果的な戦略に
網膜スキャンと並行した肝検査の実施は線維症を発見するのに効果的
患者の多くは検査に前向き
2型糖尿病患者に糖尿病網膜症などの眼疾患の検査を実施すると同時に、肝臓障害の検査も複合的に実施するのは効果的だと、スウェーデンのカロリンスカ研究所が発表した。研究成果は、「Lancet Gastroenterology & Hepatology」に掲載された。
「2型糖尿病患者の半数以上が脂肪肝疾患をもっているが、肝疾患は初期段階には症状があらわれることはほとんどなく、ほとんどの患者は気付いていない。国際ガイドラインでは、2型糖尿病を含む、肝線維症のリスクが高い患者に対して、検査を行うことが推奨されている」と、同研究所の肝臓病専門医であるHannes Hagström氏は言う。
スウェーデンでは、2型糖尿病患者の網膜症などを検出するために、網膜スキャン(眼底撮影)がスクリーニングプログラムとして確立されているが、皮膚のうえから肝硬度を調べる超音波エラストグラフィを複合的に行うと、肝臓障害もスクリーニングできるとしている。
ガイドラインでは、2型糖尿病患者に対して代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)による進行性の肝線維症のスクリーニングを行うことも推奨されているが、臨床ケアにどのように実装するかは確立されていない。
一方、非侵襲的に組織弾性を測定できる機器として開発されたエラストグラフィは、乳腺腫瘍領域を中心に発展してきたが、肝線維化も評価できることから、肝生検に代わる非侵襲的な肝線維化の検査法として有用視されている。
そこで研究グループは、2020年11月~2023年6月に網膜スキャンを受けた2型糖尿病患者1,300人のうち、77%にあたる1,005人に、エラストグラフィによる肝検査も実施した。検査に要した時間は5~10分だった。
その結果、15.8%に肝線維症を示唆する所見がみられ(≥8.0kPa)、5.0%に進行した肝線維症あるいは肝硬変を示唆する所見がみられた(>12.0kPa)。
肝臓専門医への紹介後に、フィブロスキャン検査(VCTE)で肝硬度を再評価したところ、8.0kPa未満が45.2%、8.0kPa以上が7.4%、12.0kPa超が2.9%だった。
「網膜スキャンと並行した肝検査の実施は、代謝機能障害に関連する脂肪肝疾患による線維症の患者を発見する効果的な戦略になる可能性がある。2型糖尿病患者の多くは、こうした複合スクリーニングを受けることに前向きであることも示された」と、Hagström氏は指摘している。
「肝疾患は予後が悪い状態で発見されることが多い。肝検査を複合的に実施することで、2型糖尿病患者の肝線維症が肝硬変や肝臓がんに進行する前に簡単に検出できるという、一石二鳥の効果を得られる」。
「偽陽性が多く出ることも示されたが、多くの患者が検査前の絶食を行っていなかった可能性が考えられる。眼疾患と肝臓疾患の複合スクリーニング戦略が有益であるかどうかを確認するために、医療経済分析を実施することも必要になる」と付け加えている。
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