2型糖尿病リスクを知るために[体重・身長・腹囲]に着目した指標が必要 BMIや腹囲のみでは不十分 京都府立医科大学など

2024.11.06
 ▼BMI、▼腹囲、▼腹囲身長比、▼体形指数(ABSI)、▼腹囲補正BMIといった、さまざまな体格指数での2型糖尿病発症の予測能力を比較した結果、男性では腹囲身長比、女性では腹囲調整BMIと腹囲身長比が、それぞれ2型糖尿病の発症予測に優れていることが、京都府立医科大学などによる日本人を対象とした大規模研究により示された。

 これらの指標は、健診結果から容易に計算することができる。男性では腹囲身長比 0.497、 女性では腹囲調整BMI 18.6kg/m、腹囲身長比 0.510が目安になるとしている。

 「2型糖尿病の発症予防のため、BMIや腹囲のみをみるのではなく、もしこれらの指標が基準を超えている場合は、食事や運動などの生活習慣を見直すことが勧められる」と、研究グループでは述べている。

2型糖尿病リスクを男性では「腹囲身長比」、女性では「腹囲調整BMI」と「腹囲身長比」で予測

 ▼BMI、▼腹囲、▼腹囲身長比、▼体形指数(ABSI)、▼腹囲補正BMIといった、さまざまな体格指数での2型糖尿病発症の予測能力を比較した結果、男性では腹囲身長比、女性では腹囲調整BMIと腹囲身長比が、それぞれ2型糖尿病の発症予測に優れていることが、日本人を対象とした大規模研究により示された。

 2型糖尿病発症のカットオフ値は、男性の腹囲身長比は0.497、女性では腹囲調整BMIは18.6kg/m、腹囲身長比は0.510であることも分かった。

 研究は、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学の小林玄樹氏、岡田博史助教、福井道明教授、パナソニック健康保険組合の伊藤正人氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetes Research and Clinical Practice」に掲載された。

 肥満は2型糖尿病発症の主要な危険因子だが、肥満の評価にはさまざまな指標があり、健診では現在、BMI(体格指数)や腹囲が測定され、それを介入基準として特定保健指導が実施されている。

 「BMIのみならず腹囲身長比、腹囲補正BMIに注目することで、2型糖尿病の新規発症の予防につながる可能性がある」と、研究者は述べている。

 腹囲調整BMIは、BMIと腹囲と組み合わせた指標で、脂肪量に加えその分布も考慮した指標。体形指数(ABSI:a body shape index)は、BMIと腹囲から計算され、年齢や性別の影響を受けにくい指標。腹囲身長比は、腹囲と身長の比で、中心性肥満の評価に有効だ。

出典:京都府立医科大学、2024年

15万人超の日本人の職域データを解析 BMIや腹囲以外にも着目

 BMIと腹囲は、日本の健康診断でも測定項目となっており、身長と体重から計算されるBMIは世界的にもっとも普及している指標であり、腹囲も内臓脂肪の蓄積を簡便に評価できる。

 一方で、2型糖尿病を含む生活習慣病予防のため、BMIや腹囲を介入基準として特定保健指導が実施されているものの、その効果は限定的であることが分かっている。

 そこで研究グループは今回、2008~2021年の職域データ15万5,623人(男性 11万5,036人、女性 4万587人)を最大13年間追跡したデータを解析した。

 パナソニック健康保険組合が保有する健保加入会社が実施した健康診断受診者(18歳以上)のデータを対象に、身体測定、血液検査、問診結果を収集した。すでに2型糖尿病を有する参加者やデータの不足している参加者などは除外し、それぞれの体格指標と2型糖尿病の新規発症について分析した。

 追跡期間中に男性8,005人、女性795人が新規に2型糖尿病を発症。平均年齢は男性45.2歳、女性42.0歳でBMI、腹囲、腹囲調整BMI、ABSI、腹囲身長比の平均は表の通り。

()には%あるいはばらつきを表す指標である標準偏差を記載
出典:京都府立医科大学、2024年

 研究期間中に男性8,005人、女性795人が2型糖尿病を発症した。そのうち、それぞれの体格指数が標準的な値より1単位分(=1標準偏差)変化した場合の2型糖尿病発症のリスクは男女ごとで大きな差はなく、ABSI以外の指標は約1.4~1.5だった。

 研究グループは次に、各指標による2型糖尿病発症予測の性能・曲線を作成、その結果、男性では腹囲身長比が他の4指標よりも面積が有意に高く、女性では腹囲調整BMIと腹囲身長比はABSI、腹囲より曲線下面積が有意に高値だった。

 これらの指標のカットオフ値は、男性で腹囲身長比 0.497、女性で腹囲調整BMI 18.6kg/mと腹囲身長比 0.510となった。

5つの体格指数で2型糖尿病の発症を予測
▼BMI、▼腹囲、▼腹囲身長比、▼体形指数(ABSI)、▼腹囲補正BMI
15万人超を最大13年間追跡したデータを解析
出典:京都府立医科大学、2024年

男性では腹囲身長比、女性では腹囲調整BMIと腹囲身長比が2型糖尿病の発症予測に優れている

 今回の研究により、男性では腹囲身長比、女性では腹囲調整BMIと腹囲身長比が、それぞれ2型糖尿病の発症予測により優れていることが示された。

 日本人は西洋人と比較して、皮下脂肪に対し腹部内臓脂肪が多いと報告されているなど、脂肪分布の考慮が重要となる。BMIは広く使用されているが、筋肉量や脂肪分布が考慮されていない。具体的には筋肉量の多いアスリートは、体重の増加によりBMIも高値になり、反対に内臓脂肪が多いが筋肉量が少なく体重が低い場合は、健康リスクが高いにも関わらずBMIが低値になる。

 腹囲身長比は、内臓脂肪を反映する腹囲に身長を組み合わせることで体格や脂肪分布を反映するため、男女ともに2型糖尿病発症に有効と考えられる。

 また、脂肪の分布は男女で異なり、男性は腹部に、女性は腰、大腿、臀部など下半身に脂肪が蓄積しやすい。腹囲調整BMIは、腹囲に全体の体脂肪を反映するBMIを組み合わせた指標であり、女性でとくに有用と考えられるという。

 「これらの指標は、健診結果から容易に計算することができる。男性では腹囲身長比 0.497、 女性では腹囲調整BMI 18.6kg/m、腹囲身長比 0.510が目安になる」と、研究グループでは述べている。

 「2型糖尿病の発症予防のため、BMIや腹囲のみをみるのではなく、もしこれらの指標が基準を超えている場合は、食事や運動などの生活習慣を見直すことが勧められる」としている。

京都府立医科大学 大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学
Associations between anthropometric indices as complementary predictors and incidence of type 2 diabetes; Panasonic Cohort Study 21 (Diabetes Research and Clinical Practice 2024年11月)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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