妊娠前の糖尿病前症レベルの糖代謝異常でも早産リスクに影響
糖尿病女性の妊娠転帰については多くの報告があり、例えば早産については、非糖尿病女性の3.5倍程度にリスクが上昇するとされている。その一方、糖尿病前症の状態で妊娠した場合の早産リスクに関する報告は少ない。Delker氏らはこの点について、米国で行われている思春期から成人期の健康に関する前向きコホート研究(The National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Health;Add Health)のデータを用いた研究を行った。
Add Healthの第4回調査(2008~2009年)から第5回調査(2016~2018年)の間に1人以上を出産した女性2,272人から、多胎出産や血糖関連データの欠落者などを除外し、1,989人を解析対象とした。妊娠前の耐糖能レベルについては、糖尿病の自己申告、糖尿病用薬の使用、HbA1c6.5%以上、随時血糖200mg/dL以上、空腹時血糖126mg/dL以上のいずれかが該当する場合を「糖尿病」、HbA1c5.7~6.4%または空腹時血糖100~125mg/dLの場合を「糖尿病前症」、これらに該当しない場合を「正常耐糖能」と定義。それぞれの該当者数は、糖尿病が138人(6.9%)、糖尿病前症が471人(23.7%)、正常耐糖能が1,380人(69.4%)だった。なお、年齢は第4回調査時点で平均28.6歳(範囲24~34)。
早産の発生率は、糖尿病群25.4%、糖尿病前症群15.1%、正常耐糖能群11.0%だった。早産リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、腹囲長、喫煙習慣、妊娠回数、収縮期血圧、教育歴、人種/民族、妊娠から血糖評価までの月数、居住地域など)を調整後、糖尿病群の早産リスクは約2.1倍であることが分かった〔調整リスク比(aRR)2.07(95%信頼区間1.46~2.94)〕。また、糖尿病前症群はリスクが30%高い傾向にあった〔aRR1.30(同0.99~1.70)〕。なお、糖尿病群をHbA1c6.5%未満/以上で二分すると、6.5%未満群ではaRR1.54(0.89~2.67)、6.5%以上群はaRR2.67(1.73~4.13)となった。
HbA1cを連続変数として評価した場合、早産リスクとの関係は非線形となり、糖尿病前症のカットオフ値と一致するHbA1c5.7%を超えるあたりから、リスクが上昇し始めていた。このほかに、連続して保険に加入していない女性は早産リスクが高いことも示された。
著者らは、「われわれの研究は、妊娠成立前に糖尿病に罹患していることと早産リスクとの間に強固な関連があるとする既報研究の結果を再現するとともに、糖尿病前症のレベルでも早産リスクが高いことを明らかにした。妊娠前の女性の医療へのアクセスを改善し、介入の機会を増やすという政策が、人々の健康に大きなメリットをもたらす可能性がある」と述べている。
[HealthDay News 2023年3月8日]
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