人工知能(AI)により糖尿病や脂質異常症などの将来リスクを予測し行動変容につなげる 国際医療研究センターなどが共同研究
2021.03.02
国立国際医療研究センター(NCGM)とアクセンチュアは、10年近くかけて蓄積された約12万件の健康診断データをもとに、生活習慣病(2型糖尿病・高血圧症・脂質異常症)の将来リスクを確率として提示する、解釈性の高い人工知能(AI)モデルの構築を目指し、共同研究を開始すると発表した。
NCGMが実施している、関東・東海地域に本社を置く企業が参加した職域多施設研究(J-ECOHスタディ)で収集されたデータのうち、約12万件の匿名化された健康診断データを分析する。
NCGMが実施している、関東・東海地域に本社を置く企業が参加した職域多施設研究(J-ECOHスタディ)で収集されたデータのうち、約12万件の匿名化された健康診断データを分析する。
説明可能なAIモデルにより、疫学的に解釈できる予測モデル構築を目指す
国立国際医療研究センター(NCGM)とアクセンチュアは、10年近くかけて蓄積された約12万件の健康診断データをもとに、生活習慣病(2型糖尿病・高血圧症・脂質異常症)の将来リスクを確率として提示する、解釈性の高い人工知能(AI)モデルの構築を目指し、共同研究を開始すると発表した。 共同研究では、NCGMが実施している、関東・東海地域に本社を置く企業が参加した職域多施設研究(J-ECOHスタディ)で収集されたデータのうち、約12万件の匿名化された健康診断データを分析する。 「J-ECOHスタディ」は、2012年にNCGMが開始し、働く世代での生活習慣病や作業関連疾患を予防し、職域健康診断の有効性や効率を高めることを主な目的とした大規模な職域多施設研究。 関東・東海に本社を置く10数企業の社員15万人以上を対象に、定期健康診断、循環器疾病・死亡・長期病休など事業場の健康管理資料を収集・分析している。さらに、働き方や食生活・運動に関するサブスタディも行われている。 2型糖尿病、がん、循環器疾患といった生活習慣病は、国内の医療費の約3割、死亡数の約5割を占めるとされており、効果的な生活習慣病予防による日本人の健康増進、ならびに医療財源逼迫の解消が期待されている。アプリや医療従事者向け健康指導ツールの開発も視野に入れる
今回の共同研究では、セキュアなデータ環境のもと、健康診断データに含まれる既往歴、服薬状況、血液検査結果などの健康データや運動や喫煙、飲酒などの生活習慣データなどを分析し、生活習慣病のリスク要因について、疫学的にも解釈可能な予測モデル構築を目指す。 これにより、人工知能(AI)の予測結果のブラックボックス化が課題になっている医療業界で、説明可能なAIの活用を目指す。 共同研究で構築するリスク予測モデルは、今後、論文などで対外公開される予定。同社とNCGMは国、自治体や企業などと連携し、個人向けのヘルスケアアプリや医療従事者向け健康指導ツールなど、生活習慣の改善や健康増進を支援するソリューションへの展開も視野に入れた活動も行う。 生活習慣病に関する予防医学の専門家であり、研究の責任者を務める国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部・部長の溝上哲也氏は次のように述べている。「2型糖尿病や高血圧などの生活習慣病は自覚症状があらわれることなく発症し、重症化する危険性があります。病気にかかるリスクを正確に予測し、さらに個々人の行動変容につなげれば、発症予防に役立てることができます。幅広い業界でAI導入や課題解決の実績があるアクセンチュアと協働し、解釈が容易なAIリスク予測モデルを開発することで、生活習慣病予防を推進し、国民のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に寄与することを期待しています」。 アクセンチュアのAIグループ日本統括マネジング・ディレクターを務める保科学世氏は次のように述べている。
「今回、日本での予防医療・糖尿病研究の第一人者である溝上先生と連携し、予防医療でのデータの利活用をさらに高度化させることで、生活習慣病の予防意識の向上に貢献できると期待しています。どのような要因がどの程度生活習慣病のリスクにつながっているのか、精度だけではなく解釈性も高いAIモデルを目指すことで、医療分野での責任あるAI活用の普及に努め、国民の医療費削減といった日本の課題の解決にも寄与してまいります」。 なお、研究でのデータ活用は、倫理審査委員会の承認を得たJ-ECOHスタディ研究計画書にのっとって適切に実施するとしている。 職域多施設研究(J-ECOHスタディ) 国立国際医療研究センター(NCGM) アクセンチュア
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]