糖尿病・肥満症外来で血糖のクラウド管理システムを用いた遠隔診療を開始在宅での血圧・体重・血糖値・インスリン使用量などを医師が確認 慶應義塾大学病院
2020.12.22
慶應義塾大学病院、中部電力、メディカルデータカードは、同病院の糖尿病・肥満症外来(腎臓・内分泌・代謝内科)で11月20日より、血糖のクラウド管理システムを用いた遠隔診療および遠隔診療を支援するシステムの運用を共同で開始したと発表した。
在宅での血圧、体重、血糖値、インスリン使用量などを医師が遠隔で確認
妊娠糖尿病や1型糖尿病、肥満症外来でも活用
同システムは、中部電力のデータプラットフォームとメディカルデータカードの「MeDaCa」アプリを活用し、今年6月に産科外来で開始した遠隔妊婦健診システムに、患者自身の血糖値やインスリンなどの使用量を記録する仕組みを搭載したもの。
このシステムにより、患者の同意のもと、在宅での血圧、体重、血糖値、インスリン使用量などのデータを医師が遠隔で確認することが可能になる。
血圧計や体重計はすでにクラウドの連携により自動でデータ収集が可能であり、将来的には簡易自己血糖測定器との連携も行い、患者のデータ入力負担の軽減を目指す。
なお、従来通りメディカルデータカードの「MeDaCa」アプリを活用し、医師と患者のビデオ通話による診察や、検査結果・処方箋控えデータなどのアプリへの送信も行なっており、同システムは糖尿病専門医と患者、糖尿病専門医とかかりつけ医をつなぐ情報の架け橋としての役割も担う。
同システムでは、血糖値のデータを医師がリアルタイムで確認することが可能であり、従来の産科外来での遠隔妊婦健診の対象であり短期でのフォローが必要となる妊娠糖尿病や妊娠高血圧症の患者も利用対象としている。
さらに、1型糖尿病などインスリン頻回注射療法を行っており、インスリン量の細やかな調整が必要な患者や、生活習慣や心理面を把握することが必要で、対話が重視される肥満症外来でも活用される。
出典:慶應メディカルAIセンター、2020年
患者の通院負担を軽減し、診療業務の効率化もはかれる
テレビ電話機能によるFace to Faceの安心感も
現在、妊娠糖尿病患者の診療に同システムを導入開始しており、利用者からはシステムそのものの利便性の高さ、通院負担や時間的拘束からの解放、テレビ電話機能によるFace to Faceの安心感など、多くの面で高評価をもらっているという。
とくに妊娠糖尿病分野で、医師側として実際の対面診療と遜色ないデータが揃っている点や、データが集約されたことによる視認性の改善、患者の通院負担を気にかけることなく短期でも気兼ねなく診察が可能である点で、診療業務の効率化と同時に医療のクオリティ向上が可能だという。診察待ち患者を診察室前で待機させているというストレスからも解放される。
現在、新型コロナウイルスは終息する傾向はなく、通院による感染リスクや身体的・精神的負担の軽減が必要とされている、不用意な対面診察の延期は病状悪化をもたらすおそれがある。
システムを活用することで、在宅測定データを医師が遠隔でリアルタイムで確認することで、治療方針変更後の早期の治療効果の確認、血糖コントロールの状況に合わせた来院時期の調整、遠隔診療もしくは対面診療とするか事前に判断するなど、患者の実際のデータに応じたきめ細やかな対応を行うことも可能となるとしている。
出典:慶應メディカルAIセンター、2020年
同システムは今後さらなる改良を重ね、将来的に医療機器メーカーや医療機関の垣根を超えたシームレスなデータ連携遠隔医療システムを構築することを目標とし、慶應義塾大学病院、中部電力、メディカルデータカードで開発を進める。
同病院は、内閣府より戦略的イノベーション創造プログラム「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」の研究開発事業を受託しており、今回の取り組みは、その一環として、在宅患者の見守りや遠隔診療支援、コミュニティヘルスケアサポートについて、中部電力と共同で進めた研究の成果だ。
「今後も、AI・IoT技術などを用いて、医師がより正確な診断を行うための支援や、医師と患者のコミュニケーションサポートなどを通じてより良い医療を提供することで、健康的な生活を送れるようなサービスの開発に努めていきます」と、三者は述べている。
慶應メディカルAIセンター戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」(医薬基盤・健康・栄養研究所)
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」成果発表シンポジウム2020 発表資料(医薬基盤・健康・栄養研究所 2020年10月21日)
AIホスピタルによる高度診断・治療システム推進委員会(内閣府)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]