内視鏡で肥満症を治療する「内視鏡的スリーブ状胃形成術」に成功 糖尿病やメタボの多い日本でこそ普及を 慈恵会医科大

2020.12.03
 東京慈恵会医科大学は、肥満症の新たな治療法として、日本初となる「内視鏡的スリーブ状胃形成術」を成功させたと発表した。
 研究は、東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座の炭山和毅教授らと、同大外科学講座肥満外科の研究グループによるもの。

国内初のESG:内視鏡を使い胃の一部を内側から縫い合わせて容積を減少

出典:東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座、2020年
 「内視鏡的スリーブ状胃形成術」(Endoscopic Sleeve Gastroplasty:ESG)は、米メイヨークリニックのChristopher Gostout教授らによって2013年に開発された。口から挿入した内視鏡を用いて、胃の一部を内側から縫い合わせて容積を減少させ(縫縮)、満腹効果が得られるようにするもので、身体の表面に傷を作らず、患者の身体的負担を軽減しながら、外科的な胃の部分切除手術と同等の高い治療効果が得られるとされている。

 欧米を中心に高度肥満患者を対象に行われている外科的な減量手術は、治療効果が高い反面、侵襲度の高さや手術にともなう合併症などの課題もある。

 一方、「内視鏡的スリーブ状胃形成術」(ESG)は、肥満症の患者にとっては、内科的治療と外科的減量手術の中間に位置する新たな治療選択肢となると考えられる。欧米を中心にすでに数千人に行われており、術後5年経過しても体重の再増加はないと報告されている。

 日本でもESGの安全性と減量効果が実証されれば、多くの肥満症の患者に、安全かつ効果的な治療を提供できるようになる可能性がある。研究グループは、ESGの安全性や臨床的意義を強く感じ、欧米に比べて肥満の程度は軽いものの、2型糖尿病や高血圧症、メタボリックシンドロームの発症率の高い日本でこそESGを普及させるべきだと考えているという。

出典:東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座、2020年

日本でもESGの安全性・減量効果を検証 20人の肥満症の患者を募集

 東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座の炭山和毅教授は、2005年に留学先の米メイヨークリニックで、Gostout教授の指導のもと、内視鏡縫合器の開発に携わってきた。その後、その処置具は医療機器としてApollo Endosurgery社より「OverStitch」として欧米で製品化され、さまざまな内視鏡手術に応用されている。

 同講座では、国内初の臨床導入となった「OverStitch」を用いた内視鏡治療後潰瘍の閉鎖を行う臨床試験を含め、さまざまな研究を行い、国際学会や論文で発表しているという。

 また、研究分担者である同講座の土橋昭助教も2年間、Gostout教授の研究室で「OverStitch」を用いた減量手術法の研究を行っている。実際にESG手術に何度も立ち合い、動物モデルを用いたESGのトレーニングも重ねているという。

 今回の試験では、20人の肥満症の患者を募集し、術後6ヵ月間の追跡調査を行う。日本国内でもESGの安全性や減量効果が実証されれば、多くの肥満症の患者に、安全かつ効果的な治療を提供できるようになると期待しているという。

 なお、同大におけるESG研究は、治療に使用する内視鏡的縫合器(OverStitch Sx)が、日本の医薬品医療機器等法(薬機法)の未承認医療機器であるため、臨床研究法にもとづき、倫理委員会による厳格な評価のもと承認を得た特定臨床研究として実施されている。

出典:東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座、2020年

東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座

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