MR拮抗薬「フィネレノン」が2型糖尿病を合併するCKD患者で進行を抑制 腎および心血管系のベネフィットを示す
2020.11.06
バイエル薬品は、第3相臨床試験「FIDELIO-DKD」の結果より、開発中のMR拮抗薬「フィネレノン」が2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者において、プラセボと比べCKDの進行を抑制することが示されたと発表した。
同試験の結果は、ASN腎臓週間2020で発表され、医学誌「ニュー イングランド ジャーナル オブ メディシン」に同時掲載された。
同試験の結果は、ASN腎臓週間2020で発表され、医学誌「ニュー イングランド ジャーナル オブ メディシン」に同時掲載された。
2型糖尿病を合併するCKD患者で腎および心血管系のベネフィットを示したファースト イン クラスのMR拮抗薬
「フィネレノン」は、同社が臨床開発中の新規非ステロイド性選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)で、MR系の過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。MRの過剰活性化は、炎症や線維化の過程を通した腎臓や心血管系の障害の主な原因となる。 「FIDELIO-DKD」試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間、多施設、イベント主導型の第3相臨床試験。世界48ヵ国の1,000施設以上から登録された2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者約5,700人を対象に、腎不全および腎臓病の進行抑制に関して、標準治療に上乗せしたときの「フィネレノン」の有効性と安全性をプラセボと比較検討した。 その結果、「フィネレノン」10mgまたは20mgの1日1回経口投与を標準治療(血糖降下剤や、ACE阻害薬、ARBなどのRAS阻害薬の最大耐用量)に上乗せした場合、追跡期間中央値2.6年にわたり、腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から40%以上の持続的なeGFR低下、腎臓死の最初の発現までの複合リスクをプラセボと比べ、18%有意に低減した(相対リスク低減、HR0.82[95%CI, 0.73-0.93;p = 0.0014])。 同試験は、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、腎特有のアウトカムに特化した主要複合評価項目に関して良好なアウトカムを示した初めての大規模臨床試験となった。同試験結果はASN腎臓週間2020で発表され、医学誌「ニュー イングランド ジャーナル オブ メディシン」に同時掲載された。 主要複合評価項目の個別項目の結果は次の通り――。・ 腎不全:HR 0.87, 95%CI(0.72-1.05)
・4週間以上持続するベースライン時点から40%以上の持続的なeGFR低下:HR 0.81, 95%CI(0.72-0.92)
・ 腎臓死:4人のみ(各群2人) 「フィネレノン」はまた、追跡期間中央値2.6年にわたり、主な副次複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の最初の発現)のリスクをプラセボと比べ、14%有意に低減した(相対リスク低減、HR0.86[95%CI, 0.75-0.99;p = 0.0339])。 主な副次複合評価項目の個別項目の結果は次の通り――。
・ 心血管死:HR 0.86, 95%CI(0.68-1.08)
・ 非致死的心筋梗塞:HR 0.80, 95%CI(0.58-1.09)
・ 非致死的脳卒中:HR 1.03, 95%CI(0.76-1.38)
・ 心不全による入院:HR 0.86, 95%CI(0.68-1.08) 米国シカゴ大学医学部米国心臓協会総合高血圧センター内科学教授で、FIDELIO-DKD試験の治験責任医師であるジョージLバクリス氏は次のように述べている。 「血行動態や代謝経路に焦点を当てた治療が使用可能であるにもかかわらず、2型糖尿病を合併するCKDの患者さんでは腎臓病の残余リスクがあります。FIDELIO-DKD試験から得られた知見は、2型糖尿病を合併するCKDの患者さんの治療について、新しい戦略の可能性を示す重要なエビデンスをもたらしました。MRの過剰活性化は腎臓と心臓の炎症と線維化の一因であり、新しい治療法の有望な標的となります。新しい治療戦略が、さらなる末端臓器障害を抑制し、患者さんの腎機能低下速度を遅らせるために必要です。フィネレノンの本試験結果では、現在選択肢が限られている2型糖尿病を合併するCKDの患者さんのアウトカム改善が示されており、新たな治療選択肢の1つになる可能性があります」 「FIGARO-DKD」試験も進行中で、47ヵ国から登録された2型糖尿病を合併するCKD患者約7,400人を対象に、心血管疾患の罹患率と死亡率の低減に関して、標準治療に上乗せしたときのプラセボに対する「フィネレノン」の有効性と安全性を検討している。 さらに同社は、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第3相臨床試験「FINEARTS-HF」の開始も発表した。同試験は、左室駆出率40%以上の症候性心不全(HF)患者(NYHA心機能分類Ⅱ-Ⅳ度)5,500人以上を対象に、「フィネレノン」とプラセボを比較検討する。同試験の主要目的は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院またはHFによる緊急受診と定義)の複合評価項目の発現率減少に関して、プラセボに対する「フィネレノン」の優越性を検証すること。 バイエル薬品
Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes(ニュー イングランド ジャーナル オブ メディシン2020年10月23日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]