米国糖尿病学会(ADA)など7組織が「2型糖尿病患者の自己管理教育と支援に関するコンセンサス」を改訂 栄養指導がHbA1cを最大2%低下

2020.09.03
糖尿病教育・支援に関するコンセンサスレポートが改訂される
 米国糖尿病学会(ADA)など糖尿病関連7組織の共同による、成人2型糖尿病患者の自己管理教育とサポート(Diabetes Self-management Education and Support;DSMES)に関するコンセンサスレポートが、「Diabetes Care」7月号に掲載された。2015年にまとめられた内容を改訂したもの。

 改訂版コンセンサスレポートでは、DSMESは患者の転帰、生活の質(QOL)を改善させる費用対効果の高い介入法であり、糖尿病患者はDSMESを受ける権利があるとしている。また、医療提供者がDSMESを実施すべきタイミングとして、(1)糖尿病診断時、(2)治療目標未達成時または年1回、(3)合併症発症時、(4)生活環境や治療内容が変わる時――という四つを挙げている。

 糖尿病の自己管理については、重要な7項目を「The AADE 7 Self-Care Behaviors;AADE7」として取り上げており、その内容は、健康的な食事、身体活動、服薬順守、血糖測定など。これらの実践スキルを患者が習得することを、医療提供者はチームでサポートすべきとしている。

 AADE7の中では特に、「健康的な食事」をサポートするための医学的栄養療法(Medical Nutrition Therapy;MNT)に関して、詳しい解説がなされている。具体的には、MNTはHbA1cを最大2%低下させ、高血圧や心血管疾患、腎疾患、消化管運動障害などの糖尿病に多い合併症の予防・治療にも有用として、糖尿病診断後の初期だけでなく継続治療中も不可欠と述べている。また、食習慣は個人の文化的、宗教的、経済的背景および嗜好により異なることから、MNTの実施に際してはそれらへ留意することを付言している。

 米国の糖尿病患者数は2014年の2,230万人(人口の9.1%)から2030年には3,970万人(13%)、2060年には6,060万人(17%)に増加すると予測されており、糖尿病対策は喫緊の課題。DSMESが糖尿病患者に多くのベネフィットをもたらすというエビデンスがあるにもかかわらず、その実施率は高くない。2型糖尿病の診断から1年以内にDSMESが行われるのは、個人保険加入者で6.8%、メディケア加入者では5%と報告されている。このため今回公表されたコンセンサスレポートでは、何がDSMES実施の障害となっているのかを明らかにし、その対策を講じることの重要性にも触れている。

 なお、数名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

[HealthDay News 2020年6月11日]

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