「FreeStyle リブレ」が1型糖尿病の低血糖時間を短縮 Lancetに発表

2017.02.22
 最長14日の間、グルコース値を持続的に測定し、15分毎に自動記録できるフラッシュグルコースモニタリングシステム「FreeStyle リブレ」を用いると、通常の血糖自己測定に比べ、低血糖の回数が減り、1日の低血糖時間を約1.4時間短縮できることを示した研究が、「Lancet」オンライン版に2016年9月12日付で掲載された。

低血糖を起こすことなく、血糖コントロールを改善することが目標

 糖尿病治療の目標達成において重要なことは、「血糖値を正常域に保持すること」だ。良好な血糖コントロールが、大血管性および細小血管性の糖尿病合併症予防につながるが、そのためには、血糖を下げることを重要視した厳格な血糖コントロールが必要となる。

 しかし、糖尿病治療を行うなかで、血糖値が下がり過ぎる「低血糖」を起こしてしまう場合があり、この低血糖が良好な血糖コントロールを実現する上で大きな障害となっている。

 低血糖を起こすことなく、血糖コントロールを改善する治療をいかに実現するかが、糖尿病治療の大きな課題となっている。その鍵のひとつが患者自身による自己管理だ。

HbA1c7.5%以下の1型糖尿病患者が対象

 フラッシュグルコースモニタリングシステム「FreeStyle リブレ」は、従来の血糖自己測定に比べ、1日の低血糖の時間を1.24時間(38%)減少させることを、スウェーデンのカロリンスカ大学病院のJan Bolinder氏らが、6ヵ月の多施設・前向き・非盲検・ランダム化比較試験により明らかにした。

 研究グループは、2014年9月4日~2015年2月12日にかけて、欧州の23ヵ所の糖尿病センターを通じて、血糖コントロールが良好な(HbA1c値7.5%[58mmol/mol]以下)1型糖尿病成人患者328例を対象に試験を行った。

 被験者全員に2週間にわたって盲検化センサー(blinded sensor)を着用させ、50%以上読み取りができた被験者(241例)を無作為に2群に分けた。一方の群は、「FreeStyle リブレ」を使用(介入群、120例)、もう一方の群は、従来の血糖自己測定を用いてセルフモニタリングを行った(対照群、121例)。

 介入群の65%は男性、平均年齢は42歳(33~51歳)、対照群の49%は男性、平均年齢は45歳(33~57歳)だった。

 主要評価項目は、ベースラインから6ヵ月後までの、1日の低血糖(70mg/dL[3.9mmol/L]未満)を示した回数と時間の変化とした。

1日の低血糖時間が38%減少

 その結果、1日の低血糖時間は、介入群では、3.38時間/日から2.03時間/日へと変化し、補正後平均変化時間は-1.39時間/日だった。

 一方、対照群ではベースライン3.44時間/日から6ヵ月後は3.27時間/日へと変化し、補正後平均変化時間は-0.14時間/日だった。

 介入群と対照群の変化時間を比べると、1日の低血糖時間は-1.24時間/日の有意差が認められ(p<0.0001)、比率すると38%減少したことが示された。
 なお、両群とも測定器に関連する低血糖イベント発生は報告されなかったが、介入群の患者10例で、センサーに関連する有害事象13件が報告された。

 報告された有害事象はアレルギー4件(重症1例、中等症3例)、そう痒1件(軽症)、発疹1件(軽症)、センサー装着部の症状4件(重症)、紅斑2件(重症1件、軽症1件)、浮腫1件(中等度)だった。

安全かつ効果的に利用できるシステム

 血糖コントロールを改善するための治療強化は、しばしば低血糖という代価をもたらす。1型糖尿病患者の30~40%が、毎年平均1~3例の重篤な低血糖を経験しているという報告もある。また、夜間の低血糖は特に危険で、重篤な低血糖イベントのおよそ半分を占めている。

 CGM(持続血糖測定)の登場によって血糖推移の全体像を把握することができ、血糖コントロールのさらなる改善が可能になったが、血糖自己測定によるキャリブレーション(補正)が必要なことなどが課題として残っており、このことが普及の妨げにもなっている。

 「FreeStyleリブレ」は、従来の持続血糖測定器(CGM)と異なり、センサーの正確性を維持するための日々のキャリブレーションが不要だ。センサーは工場出荷前にキャリブレーションが済んでおり、その後の患者自身が指先穿刺を伴う日々のキャリブレーションを行なう必要はない。

 患者はセンサーを上腕の後部に装着し、少なくとも8時間に一度測定器をかざして、センサーに記録されているデータを読み取るだけだ。医療従事者は患者にキャリブレーションの方法を指導する必要がなく、毎回の洗浄・消毒を必要とする送信機や部品も使用していないため、業務量や時間を大幅に削減することも期待できる。

 「今後の研究で、血糖コントロールが不良なより若い糖尿病患者でも、"FreeStyle リブレ"の使用が効果的かどうかを調べる必要がある」としながらも、本研究で得られた知見から、「"FreeStyle リブレ"は、血糖コントロールを悪化させずに低血糖の発症率と時間を有意に減少させることが明らかになった。低血糖時間の38%の減少は大きい。従来の血糖自己測定の代わりに安全・効果的に利用できるシステムとして大いに期待できる」と、研究者は結論付けている。

Novel glucose-sensing technology and hypoglycaemia in type 1 diabetes: a multicentre, non-masked, randomised controlled trial.
Lancet. 2016 Nov 5; 388(10057): 2254-2263

血糖トレンドの情報ファイル

 持続的に血糖を測定できる機器(CGMやFGM:Flash Glucose Monitoring)の登場により、一時点の血糖値ではなく、数日間以上における変動の様子を示したグラフを確認できるようになりました。

 こうした機器の利用により、糖尿病患者さんでは、一日のうちに非常に大きな血糖変動が見られることや、睡眠中に低血糖をしばしば起こしていることが確認できるようになってきました。

 今回公開した「血糖トレンドの情報ファイル」では、さまざまな要因に影響を受けて常に変動している血糖値をどのように捉え、そこから見える傾向(トレンド)をいかに治療に役立てるかについて情報発信を行っていきます。

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

脂質異常症の食事療法のエビデンスと指導 高TG血症に対する治療介入を実践 見逃してはいけない家族性高コレステロール血症
SGLT2阻害薬を高齢者でどう使う 週1回インスリン製剤がもたらす変革 高齢1型糖尿病の治療 糖尿病治療と認知症予防 高齢者糖尿病のオンライン診療 高齢者糖尿病の支援サービス
GLP-1受容体作動薬の種類と使い分け インスリンの種類と使い方 糖尿病の経口薬で最低限注意するポイント 血糖推移をみる際のポイント~薬剤選択にどう生かすか~ 糖尿病関連デジタルデバイスの使い方 1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプ・CGMなど) 二次性高血圧 低ナトリウム血症 妊娠中の甲状腺疾患 ステロイド薬の使い分け 下垂体機能検査
NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療-減量・代謝改善手術- 骨粗鬆症治療薬 脂質異常症の治療-コレステロール低下薬 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症 FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症 褐色細胞腫

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料