GLP-1受容体作動薬「ビデュリオン」 世界初の週1回投与のインクレチン関連薬
2013.06.24
アストラゼネカとブリストル・マイヤーズは、5月に発売した2型糖尿病治療薬「ビデュリオン」(一般名:エキセナチド)の記者説明会を都内で開いた。「ビデュリオン」は、GLP-1受容体作動薬であるエキセナチドの週1回投与製剤だ。GLP-1は食事摂取に伴い消化管から分泌され、膵臓からのインスリン分泌を促進するホルモン「インクレチン」のひとつ。エキセナチドはこのGLP-1と同様の作用を有し、血糖値が高い状態の時、インスリン分泌を促し血糖値を改善する。バイエッタは1日2回の投与が必要だが、ビデュリオンではエキセナチドを持続的に放出する仕組みを開発し、1週間に1度の投与が可能となった。専用の懸濁用液で用時懸濁して使用する。
両社はビデュリオンの特徴として、▽世界初の週1回投与の唯一の2型糖尿病治療薬、▽安定かつ持続的な優れた血糖コントロールが期待できる、▽空腹時および食後血糖値の上昇を抑制する、▽併用可能な経口血糖降下薬が多いことを挙げている。ビデュリオンはグリニド系とα-グルコシダーゼ阻害薬以外の経口血糖降下薬との併用ができる。 国内と日本を含むアジア地域で実施した2種類の第3相臨床試験では、日本人2型糖尿病患者に対するビデュリオン2mgの週1回皮下投与の有効性と安全性が確認された。1日2回注射のバイエッタと週1回注射のビデュリオンの比較試験では、ベースラインから26週までのHbA1cの変化量は、バイエッタ群-1.12%に対して、ビデュリオン群-1.43%と低下作用が強いことが示された。空腹時血糖の変化量は、バイエッタ群-23.90mg/dLに対して、ビデュリオン群-40.57mg/dLだった。HbA1c値7%未満を達成した患者割合は、バイエッタ群35.7%に対して、ビデュリオン群46.7%だった。血糖値日内変動の抑制については、ビデュリオンはすべての測定時点で有意な血糖値の低下を示したが、食後の血糖値の上昇は1日2回注射するバイエッタの方が、朝食ごと夕食後の血糖値の上昇を抑えた。 ビデュリオンとインスリングラルギンと比較した国内第3相試験では、ベースラインから26週後の体重の変化量はビデュリオン群で-1.67kgと減少したのに対し、インスリングラルギン群で0.34kg増加した。 また、「糖尿病治療満足度質問表(DTSQs)」を用いた患者の治療への満足度を調べた調査では、「最近の治療法はどの程度融通性があると感じていますか?」と「現在の治療法を続けていくことにどの程度満足していますか?」という2項目の質問で、ビデュリオンは良好なポイントを獲得した。 説明会で講演した日本糖尿病学会理事長で東京大学糖尿病・代謝内科の門脇孝教授は、「現在の糖尿病治療では、とにかくHbA1cを下げれば良いというのではなく、"低血糖を起こさない治療"、"食後高血糖を是正する治療"、"体重増加を起こさない治療"を重視するようになった。ビデュリオンはこの3つの条件に合致している。1回の注射で効果が1週間持続する点も革新的だ。治験で体重減少効果も示されており、ビグアナイド薬との併用も可能なビデュリオンは現在の糖尿病の治療戦略に適っている」と述べた。 アストラゼネカとブリストル・マイヤーズは、医師や医療従事者および患者向けの情報サイトを立ち上げ、患者向けコールセンターを設置しているほか、患者指導用の動画ビデオなども提供している。 両社は糖尿病領域でグローバル提携している。「バイエッタ」と「ビデュリオン」のGLP-1受容体作動薬2剤のほか、SGLT-2阻害薬「ダパグリフロジン」(一般名)の開発を共同で行っている。ダパグリフロジンは国内第3相試験が行われている。ビデュリオンのペン型タイプや通常の皮下注タイプでの月1回製剤もグローバルで開発が行われている。 DM Expert:糖尿病治療医のための情報提供サイト(ブリストル・マイヤーズ)
アストラゼネカ 医療関係者向け情報サイト-MediChannel-
ビデュリオン|バイエッタ 製品情報サイト
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]