DPP-4I追加と併用OHA別にみた内皮機能改善効果 FMDでの検討

2013.06.17
 DPP-4阻害薬は血糖コントロール改善とは独立した血管内皮機能改善作用があり、その作用は併用する血糖降下薬の種類によって異なる可能性が、第56回日本糖尿病学会年次学術集会(5月16~18日、熊本)において報告された。中部ろうさい病院糖尿病・内分泌内科の草間実氏らの発表。

 DPP-4阻害薬は血糖降下以外の多面的な作用により抗動脈硬化的に働くと考えられているが、その効果を心血管イベントで評価するには長期間の介入試験が必要となる。一方、FMD検査は動脈硬化の初期の変化である血管内皮機能の低下を把握できる。草間氏らの研究は、DPP-4阻害薬追加によって実際に血管保護効果が発揮されるのかを、そのFMDで評価した研究。同時に酸化ストレスマーカーや、血管弾性の指標であるCAVIとの関連、併用する経口血糖降下薬(OHA)の違いによる差異も検討している。

 対象は同院糖尿病外来に通院中の2型糖尿病患者のうち大血管症の既往のない者で、血糖管理目的でDPP-4阻害薬を追加投与した22名(男性13名、女性9名。シタグリプチン16名、ビルダグリプチン6名)。追加投与前および投与開始後約1年経過した時点で、FMDとCAVIを測定した。DPP-4阻害薬を追加投与しなかった32名(男性19名、女性13名)を対照群とした。

 ベースライン時の患者背景は、罹病期間(DPP-4阻害薬追加群18.4+7.7年 vs 対照群13.5+8.0年)、BMI(22.9±3.4 vs 25.3±4.5)、HbA1c(7.07±0.45% vs 6.62±0.35%)で群間の有意差がみられたが、年齢、性別比、血圧、HOMA-R、血清脂質、クレアチニン値、eGFR、酸化ストレスマーカー(尿中8-OHdG、尿中ヘキサノイルリジン、MDA-LDL)、尿中アルブミン、高感度CRP、接着因子(E-セレクチン)、網膜症や腎症の発症率、FMD、CAVI、baPWV、ABIなどは両群に有意差がなかった。

DPP-4阻害薬追加でHbA1cには変化なくも、MDA-LDLとFMDが有意に改善
 DPP-4阻害薬追加から約1年後に実施した2回目の測定でベースライン時から有意に改善しているのは、MDA-LDL(87.6±30.2U/L→74.5±30.5U/L,p=0.002)とFMD(4.54±1.24%→6.16±3.00%,p=0.015)の2項目で、その他の指標はHbA1cやCAVIも含め有意な変化はみられなかった。DPP-4阻害薬の血糖降下を超えた多面的作用が示唆される。

 DPP-4阻害薬追加群におけるFMDの改善幅(ΔFMD)と、ベースライン時の各検査指標の相関をみると、eGFRとのみ有意に相関していた(r=0.499,p=0.041)。なお、DPP-4阻害薬を追加しなかった対照群は、すべての項目で有意な変化はみられなかった。

SU薬とSU薬以外のOHAでは、DPP-4阻害薬追加の影響が異なる結果に
 次に、ベースライン時に服用していたOHAの種類別にFMDの変化を検討したところ、SU薬以外のOHA(BG、α-GI、TZD、グリニド)についてはいずれも、ベースライン時にその薬剤を服用していた患者群でFMDが有意に改善しており、当該薬剤を服用していなかった群ではDPP-4阻害薬追加によるFMDの有意な変化は認められなかった(-)。

 その一方でSU薬については、ベースライン時にSU薬を服用しておらずDPP-4阻害薬を追加した患者群でFMDが有意に改善しており、ベースライン時にSU薬を服用していた群ではDPP-4阻害薬追加によるFMDの有意な変化は認められなかった(-)。

図 DPP-4阻害薬追加前後のFMDの推移

 このようにSU薬とDPP-4阻害薬との併用のみがFMDに対して他のOHA併用と異なる影響を及ぼすという結果が示されたため、ベースライン時においてSU薬を服用していた群と服用していなかった群に分けてその患者背景を比較検討。すると、血糖や血圧、脂質の管理指標、FMD、CAVI、ABIなどの動脈硬化指標、酸化ストレスマーカー、腎機能などに有意差はなかったものの、SU薬を服用していた群のほうが有意に高齢で(63.8±7.2歳 vs 55.0±8.8歳)、かつ罹病期間が長い(20.7±7.4年 vs 12.7±5.6年)という違いがあった(ともにp<0.05)。また空腹時血糖値は有意ではないもののSU薬を服用していた群で高い傾向がみられた(148.3±10.2mg/dL vs 129.2±33.3mg/dL,p=0.077)。

 これらの解析から草間氏は、SU薬のみDPP-4阻害薬追加によるFMDの変化が異なる反応を示した背景として、「年齢が高く罹病期間が長い患者さんは動脈硬化が進んでいる可能性があり、DPP-4阻害薬を追加してもFMD改善に寄与しないのではないか」と考察した。

DPP-4阻害薬と併用OHAの相性を探る検討をさらに継続
 このほか、ベースライン時の各OHAの有無別にみたDPP-4阻害薬追加によるΔFMDの検討からは、グリニドを服用していた群は服用していなかった群に比べて有意ではないものの(p=0.071)、ΔFMDが大きいことも示された。

 一連の解析のまとめとして同氏は、DPP-4阻害薬は血糖コントロールとは独立して血管内皮機能を改善する可能性があるとするとともに、「DPP-4阻害薬と併用する薬剤の組合わせとFMDについて、今後さらに検討を行う予定」と述べた。

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