血糖コントロール目標を改訂 合併症予防のための基準はHbA1c7.0%未満

2013.05.20
第56回日本糖尿病学会年次学術集会

 日本糖尿病学会は、2013年6月1日より血糖コントロールの新たな目標値を「HbA1c(NGSP)7.0%未満」とすると発表した。熊本市で開催された第56回日本糖尿病学会年次学術集会(5月16~18日)で「熊本宣言2013」として発表した。

 HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)は、過去1~2ヵ月の血糖の平均値を反映する臨床検査値。新目標値では、これまで5段階としていた血糖コントロール目標値をHbA1c値の「6.0%」、「7.0%」、「8.0%」の3段階に集約した。その上で、治療目標は年齢や罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、ケアのサポート体制などを考慮して、患者ごとに設定するとした。

 新たに「糖尿病合併症予防のための目標値」として定められたHbA1c7.0%未満は、対応する血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満がおおよその目安となる。

 これを軸に、6.0%未満を「低血糖などの副作用なく達成可能な場合の治療目標」とし、さらに8.0%未満を「低血糖などの理由で治療強化が困難な際の治療目標」と設定した。

 今大会の会長を務めた荒木栄一・熊本大学大学院代謝内科学教授は、「1987~1998年に熊本県で行われた日本人の2型糖尿病患者を対象とした『熊本スタディ』では、HbA1cが6.9%未満であれば細小血管合併症の出現する可能性が少ないことが報告されている」と説明。

 今回の血糖コントロール目標の改訂には、HbA1cの国際標準化に伴い煩雑になっていた従来の評価分類を整理し、「患者と医療者がともに理解しやすく、活用しやすいように簡素化する」という狙いがある。3つの目標値に集約することで、「国際的な基準との整合性」もとれ、「患者と医療者がともに取り組む新しい希望」になると述べた。

 荒木教授は、「糖尿病を放置すると眼・腎臓・神経などの細小血管合併症を引き起こし、また脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化症も進行させる」と説明し、日本糖尿病学会が糖尿病の予防と治療の向上に取り組んでいることを紹介した。

 熊本宣言2013は、「糖尿病となった方が健康で幸福な寿命を全うするためには、早期から良好な血糖値を維持することが重要」として、HbA1cを7%未満に保つことを呼びかける内容となっている。「あなたとあなたの大切な人のために Keep your A1c below 7%」をキャッチフレーズに、新基準の浸透をはかっていくとしている。

 新たな評価分類は,今大会の開催に合わせて発行された『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013』に盛り込まれ、『糖尿病治療ガイド2012-2013』にも明記される。

一般社団法人日本糖尿病学会
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