CREDIT試験 早期のインスリン導入が有効 IDF世界会議で発表
2011.12.14
インスリン療法による心血管イベントの予防効果を検討する大規模観察研究であるCREDIT試験の日本人登録患者の解析結果が報告された。HbA1c値は平均7.5%(JDS値)に低下し、3人に1人がHbA1c値7.0%未満を達成、空腹時血糖値、食後血糖値も改善傾向にあった。一方で、インスリン療法開始時に多くの患者が血管合併症が発症しているなど、適切なタイミングでインスリン療法が導入されていない問題点も浮き彫りになった。12月に開催された国際糖尿病連合(IDF)世界会議20112で発表された。
インスリン導入時の平均HbA1cは10.3%、罹病期間は11.8年
世界12ヵ国共同で実施されたCREDIT試験の日本人登録患者の解析結果が、12月にドバイで開催された国際糖尿病連合(IDF)世界会議2011で発表された。CREDIT試験は、インスリン使用中の2型糖尿病患者を対象に治療管理の実態を観察することで、血糖コントロールと大血管疾患イベントおよびリスク因子の関連性との関係を明らかにすることを目的に実施されている4年間の診療実態観察研究。 結果として、日本人患者ではインスリン開始時のHbA1cが低いほど、HbA1c 7.0%未満の達成率が高く、罹病期間が短いほどHbA1cが大きく低下することが確認され、適切な時期のインスリン導入により血糖コントロールが有意に改善することが示された(注:本文中のHbA1cは全てJDS値)。 2007年当時のインスリン導入の実態は、平均HbA1c10.3%、平均罹病期間11.8年だった。また83.4%が細小血管症(神経障害、網膜症、腎症のいずれか)を、25.1%が大血管症を合併していた。 インスリン導入から1年後、平均HbA1cは、10.3±2.0%から7.5±1.3%に低下し、空腹時血糖値、食後血糖値にも有意な改善が認められた(以上、P<0.001)。 HbA1c 7.0%未満の達成率は、罹病期間が5年未満の場合に46.3%と高率だった。また、HbA1cの変化量は5年未満の患者では-3.5%、15年以上の患者では-2.4%だった。これらの結果から、罹病期間が短いほどHbA1c 7.0%未満の達成率は高く、また1年後のHbA1cの変化量も大きいことが示されました。 また、インスリン導入時のHbA1cの値が低いほど、HbA1c 7.0%未満の達成率は高く、インスリン導入時のHbA1cが8.0%以下の患者では、60.0%が治療目標値を達成した。 データ解析を行った順天堂大学大学院代謝内分泌科特任教授の河盛隆造氏は、「2型糖尿病の治療目標は血管合併症の予防にあるが、わが国の現状では、インスリン療法が開始されるころには、すでに多くの血管合併症が発症していることが分かった。患者の生活に重大な影響を与える糖尿病合併症をより効率的に予防するには、一般医が外来でインスリン療法を適切なタイミングで導入する、もしくは、より早く専門医と連携しインスリン療法を導入することが重要だ」と述べた。 サノフィ・アベンティス[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]