【米国糖尿病学会2023】診療ガイドラインを改訂 NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)の診断と管理を追加
NAFLDおよび2型糖尿病の患者で推奨される治療を勧告
米国糖尿病学会(ADA)は、糖尿病診療ガイドライン「Standards of Care in Diabetes 2023」を改訂し、糖尿病患者の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断と管理に関する推奨事項を追加したと発表した。
肝疾患は、米国の2型糖尿病患者の最大70%に影響を及ぼしており、NASHを含むNAFLDは、糖尿病患者の肝疾患でもっとも一般的にみられる形態としている。NAFLDは肝硬変や肝臓がんにつながる可能性があり、心血管疾患や死亡のリスクの増加とも関連している。
今回の改訂により、標準治療の第4章「包括的な医学的評価と併存疾患の評価」が更新され、糖尿病患者でのNAFLD/NASHのスクリーニングと治療に関するいくつかの新しい推奨事項が追加された。
糖尿病患者のNAFLDの早期発見と管理の重要性が強調された。早期発見により適切な治療が可能になり、他の重篤な合併症を発症する可能性を低下することにもつながるとしている。
主な改訂内容は次の通り――。
- 過体重・肥満をともなうNAFLDおよび2型糖尿病の患者の生活改善と管理
- NAFLDと診断された2型糖尿病および過体重・肥満の成人に対するGLP-1受容体作動薬の使用
- チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)あるいはGLP-1受容体作動薬以外の血糖降下療法の使用
- 2型糖尿病および非代償性肝硬変の成人でのインスリン療法の開始による高血糖の是正
- NAFLDと心血管の関連および心血管リスクの包括的管理
- 2型糖尿病およびNAFLDによる代償性肝硬変を有する成人に対するスタチン療法
- 手術療法は成人2型糖尿病のNASH治療での適切な選択肢となるが、NAFLDによる代償性肝硬変をともなう成人2型糖尿病では慎重に行う必要があり、非代償性肝硬変では推奨されない。
「肝疾患は糖尿病の主要な合併症としてますます注目されている。ADAは、継続的な医療を必要とする慢性的で複雑な疾患である糖尿病の予防と治療を進歩させる取り組みをしている」と、ADAの最高科学・医療責任者であるRobert Gabbay氏は言う。
「糖尿病と肝疾患は密接に関連しており、医療専門家がこの病気を効果的に診断および管理するために、最新の情報を知っておくことが不可欠だ」と、ADA標準治療ガイドラインの監修者であり、同専門的実行委員会の委員長であるNuha El Sayed氏は述べている。
ADAによる糖尿病診療ガイドライン「Standards of Care in Diabetes 2023」は、専門実行委員会(PPC)によって更新されており、委員会は糖尿病ケアの分野での主要な米国の専門家による学際的なチームであり、医師、ナースプラクティショナー、糖尿病ケア・教育専門家、登録栄養士、薬剤師、成人・小児内分泌学者、疫学・公衆衛生・心血管リスク管理・微小血管合併症・妊娠前および妊娠ケア・体重管理・糖尿病予防・行動およびメンタルヘルス・入院治療・糖尿病管理でのテクノロジーの使用についての専門家により構成されている。
Standards of Care in Diabetes - 2023 (米国糖尿病学会)