日本眼科学会が眼底画像から生体年齢を推定するAIを一般公開 眼底写真から血糖の状態なども推定可能
眼底画像で生体年齢を推定するAIを開発 無償公開を開始
加齢は、がんや2型糖尿病、認知症など、さまざまな疾患の発症に影響することが知られている。近年、医療画像を用いた人工知能(AI)の開発が急速に進み、病気の有無を判定するだけではなく、画像が撮影された個人の状態を推定することができることが明らかになってきた。
そこで、日本眼科学会は、国立情報学研究所(NII)と共同で、眼底画像をもとにその人の生体年齢を推定するAIを開発し、このAIモデル(推定手法)を広く研究者が自由に利用できるよう、無償公開を開始した。
NIIは、2017年に医療ビッグデータ研究センターを設置し、医療画像ビッグデータのデータベースを構築して、医療補助AIの研究開発を実施する統合クラウド環境(クラウド基盤)を整備運用している。
日本眼科学会は、眼底画像を含む眼科データを全国の眼科関連施設から収集し、医療補助AIの研究開発を支援・促進する目的で、Japan Ocular Imaging Registry(JOIR)を2019年に設立した。
このJOIRのデータベースに収集した眼科画像を匿名化して、NIIのクラウド基盤へ送り、クラウド基盤上の計算資源を利用して、医療支援AIを研究開発している。
深層学習は機械学習でのブレークスルーであり、とくに画像認識の分野ではAIの代名詞となるほど多く利用されている。そして、画像認識の精度は人間を上回るとの報告も増加している。
新たなバイオマーカーになる可能性
開発したモデルは、年齢と性別のラベルが付与された18~84歳の健常者の眼底写真8,149枚を学習データとし、年齢を正解として深層学習を行った。
その結果、検証データの眼底画像から推定した年齢と正解ラベルの生体年齢との誤差の平均は2.39歳だった。作成した「眼底年齢推定モデル」が、実年齢とある程度の相関があると評価された。
「眼底画像から得られる情報を用いて、心血管病や認知症などのリスクを推定できることが、AIを用いない従来の古典的な疫学研究で明らかになっています」と、研究グループでは述べている。
「眼底画像から推定された年齢にどのような医学的価値があるかは現時点では不明ですが、本成果を研究者が活用し疾患対照研究や疫学研究などを行うことで、病気のなりやすさに関係する新たなバイオマーカーになる可能性があると考えられます」としている。
同モデルは、以下のJOIRのウェブページよりダウンロード可能。
医療ビッグデータ研究センター
日本眼科学会
国立情報学研究所
Japan Ocular Imaging Registry