アルコールが糖尿病リスクを上昇 男性では高FPGと多量飲酒により2型糖尿病リスクは1.8倍超に 日本人1.5万人超を調査
空腹時血糖値が高く多量飲酒をしている男性の2型糖尿病リスクは1.83倍に上昇した。女性ではこうした関連はみられず、非飲酒者、軽度飲酒者、中等度飲酒者でも、糖尿病リスクの上昇は示されなかった。
「過度のアルコール摂取は、インスリンの分泌と感受性に影響を与え、代謝関連の炎症を誘発することで、2型糖尿病のリスクを高める可能性がある。これらは、ライフスタイルの修正により改善が可能だ」と、研究者は指摘している。

多量飲酒は2型糖尿病リスクの上昇と関連 軽度・中程度の飲酒は関連せず
アルコールの摂取が、糖尿病のリスクを高めることが、日本で実施されている縦断的コホート調査「NAGALA(NAFLD in Gifu Area,Longitudinal Analysis)研究」で示された。研究は、「Scientific Reports」に発表された。
研究は、中国の重慶医科大学総合病院のYuan-Zhe Huang氏、Shao-Quan Zhou氏らによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。
NAGALA研究では、朝日大学病院総合健診センターの総合健診受診者を対象に、脂肪肝や非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)などの疫学調査が実施されている。
研究グループは、研究に参加した平均年齢が42歳の成人1万5,453人を5.4年追跡したデータを調査した。ベースライン評価には、アルコール摂取量と空腹時血糖値(FPG)が含まれ、対象者をアルコール摂取量により層別化し、Cox比例ハザード回帰により解析した。
その結果、高FPGで(100〜125mg/dL)、多量飲酒をしていた群は(アルコール量:男性>280g/週、女性>140g/週)、2型糖尿病の発症リスクが1.88倍に上昇したことが示された[HR 1.88、95%CI 1.24〜2.84]。
対照的に、正常FPGの群は(<100mg/dL)、多量のアルコール摂取は2型糖尿病リスクに有意な影響を与えなかった[HR(ハザード比) 1.10、95%CI 0.48〜2.53]。
性別にみると、高FPGで多量飲酒をしている男性の2型糖尿病リスクは1.83倍になり[HR 1.83、95% CI 1.08〜3.08]、この傾向は傾向スコアマッチングでも裏付けられた[HR 1.94、95%CI 1.13〜3.34]。正常FPGの群では有意な関連は示されなかった。
男性の多量飲酒者では非飲酒者に比較し、中性脂肪(TG)、体格指数(BMI)、肝機能指標(ALT、AST、GGT)のそれぞれの高値もみられた。
女性では、高FPGおよび正常FPGのそれぞれの群で、参照群と比較して、アルコール摂取と2型糖尿病リスクのあいだに有意な関連は認められなかった。
なお、非飲酒者[HR 1.13、95%CI 0.76~1.68]、軽度飲酒者[HR 1.05、95%CI 0.73~1.51]、中等度飲酒者[HR 0.55、95%CI 0.26~1.20]では、2型糖尿病リスクの上昇は示されなかった。
研究の対象者1万5,453人のうち、非飲酒者は30.6%(4,734人)、軽度飲酒者は54.6%(8,433人)、中等度飲酒者は10%(1,552人)、多量飲酒者は4.7%(734人)だった。高FPGは20.4%(3,146人)、正常FPGは79.6%(1万2,307人)で、期間中に2.4%(373人)が2型糖尿病と診断された。
「空腹時血糖値が高い男性では、多量飲酒はさまざまなモデルで一貫して2型糖尿病リスクの上昇と関連することが示された。逆に、軽度および中程度のアルコール摂取は、どのモデルでも糖尿病リスクとの有意な関係が示されなかった」と、研究者は述べている。
「過度のアルコール摂取は、インスリンの分泌と感受性に影響を与え、代謝関連の炎症を誘発することで、2型糖尿病のリスクを高める可能性がある。これらは、ライフスタイルの修正により改善が可能だ」としている。