アルコールが糖尿病リスクを上昇 男性では高FPGと多量飲酒により2型糖尿病リスクは1.8倍超に 日本人1.5万人超を調査

2025.02.13
 過度のアルコール摂取が、糖尿病のリスクを高めることが、日本で実施されている縦断的コホート研究「NAGALA研究」で示された。

 空腹時血糖値が高く多量飲酒をしている男性の2型糖尿病リスクは1.83倍に上昇した。女性ではこうした関連はみられず、非飲酒者、軽度飲酒者、中等度飲酒者でも、糖尿病リスクの上昇は示されなかった。

 「過度のアルコール摂取は、インスリンの分泌と感受性に影響を与え、代謝関連の炎症を誘発することで、2型糖尿病のリスクを高める可能性がある。これらは、ライフスタイルの修正により改善が可能だ」と、研究者は指摘している。

多量飲酒は2型糖尿病リスクの上昇と関連 軽度・中程度の飲酒は関連せず

 アルコールの摂取が、糖尿病のリスクを高めることが、日本で実施されている縦断的コホート調査「NAGALA(NAFLD in Gifu Area,Longitudinal Analysis)研究」で示された。研究は、「Scientific Reports」に発表された。

 研究は、中国の重慶医科大学総合病院のYuan-Zhe Huang氏、Shao-Quan Zhou氏らによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。

 NAGALA研究では、朝日大学病院総合健診センターの総合健診受診者を対象に、脂肪肝や非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)などの疫学調査が実施されている。

 研究グループは、研究に参加した平均年齢が42歳の成人1万5,453人を5.4年追跡したデータを調査した。ベースライン評価には、アルコール摂取量と空腹時血糖値(FPG)が含まれ、対象者をアルコール摂取量により層別化し、Cox比例ハザード回帰により解析した。

 その結果、高FPGで(100〜125mg/dL)、多量飲酒をしていた群は(アルコール量:男性>280g/週、女性>140g/週)、2型糖尿病の発症リスクが1.88倍に上昇したことが示された[HR 1.88、95%CI 1.24〜2.84]。

 対照的に、正常FPGの群は(<100mg/dL)、多量のアルコール摂取は2型糖尿病リスクに有意な影響を与えなかった[HR(ハザード比) 1.10、95%CI 0.48〜2.53]。

 性別にみると、高FPGで多量飲酒をしている男性の2型糖尿病リスクは1.83倍になり[HR 1.83、95% CI 1.08〜3.08]、この傾向は傾向スコアマッチングでも裏付けられた[HR 1.94、95%CI 1.13〜3.34]。正常FPGの群では有意な関連は示されなかった。

 男性の多量飲酒者では非飲酒者に比較し、中性脂肪(TG)、体格指数(BMI)、肝機能指標(ALT、AST、GGT)のそれぞれの高値もみられた。

 女性では、高FPGおよび正常FPGのそれぞれの群で、参照群と比較して、アルコール摂取と2型糖尿病リスクのあいだに有意な関連は認められなかった。

 なお、非飲酒者[HR 1.13、95%CI 0.76~1.68]、軽度飲酒者[HR 1.05、95%CI 0.73~1.51]、中等度飲酒者[HR 0.55、95%CI 0.26~1.20]では、2型糖尿病リスクの上昇は示されなかった。

 研究の対象者1万5,453人のうち、非飲酒者は30.6%(4,734人)、軽度飲酒者は54.6%(8,433人)、中等度飲酒者は10%(1,552人)、多量飲酒者は4.7%(734人)だった。高FPGは20.4%(3,146人)、正常FPGは79.6%(1万2,307人)で、期間中に2.4%(373人)が2型糖尿病と診断された。

 「空腹時血糖値が高い男性では、多量飲酒はさまざまなモデルで一貫して2型糖尿病リスクの上昇と関連することが示された。逆に、軽度および中程度のアルコール摂取は、どのモデルでも糖尿病リスクとの有意な関係が示されなかった」と、研究者は述べている。

 「過度のアルコール摂取は、インスリンの分泌と感受性に影響を与え、代謝関連の炎症を誘発することで、2型糖尿病のリスクを高める可能性がある。これらは、ライフスタイルの修正により改善が可能だ」としている。

Association between alcohol consumption and risk of type 2 diabetes in Japan: a population-base longitudinal cohort study (Scientific Reports 2025年1月3日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

インクレチン(GLP-1・GIP/GLP-1)受容体作動薬 SGLT2阻害薬 NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療 骨粗鬆症 脂質異常症 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症 FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症 褐色細胞腫
GLP-1受容体作動薬の種類と使い分け インスリンの種類と使い方 糖尿病関連デジタルデバイスの使い方 骨粗鬆症治療薬の使い分け 二次性高血圧 糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント 1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプや持続血糖測定器など)
Childhood Cancer Survivor(CCS)の小児期から成人にかけての内分泌診療 小児・思春期1型糖尿病患者・家族への指導・支援 成人期を見据えた小児期発症1型糖尿病の診療
エネルギー設定の仕方 3大栄養素の量と質 高齢者の食事療法 食欲に対するアプローチ 糖尿病性腎症の食事療法
神経障害 糖尿病性腎症 服薬指導-短時間で患者の心を掴みリスク回避 多職種連携による肥満治療 妊娠糖尿病 運動療法 進化する1型糖尿病診療 糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病患者の足をチーム医療で守る 外国人糖尿病患者診療

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料