フレイルを年齢と4つの質問だけで簡便に判定 フレイル予備群も分かる 日常診療でも応用
年齢と4つの質問だけでフレイルを判定
大阪大学は、介護前段階を意味するフレイル判定を、年齢と4つの質問項目だけできるスケール「Japan Frailty Scale(JFS)」を開発したと発表した。
開発したスケールを利用すると、年齢と4つの自覚症状[夜間頻尿・腰痛・下肢の冷え・体のだるさ]で、フレイルとプレフレイル(フレイル予備群)を判定できるという。
これまで、フレイルやそれに類似する状態の判定には、握力や歩行速度の測定や、25項目に及ぶ基本チェックリストと呼ばれる問診などが使用されてきたが、特定健診や日常臨床では、簡便に行えないという課題があった。
高齢者などに負担をかけず、簡易にフレイルやプレフレイル状態を判定できるようになれば、保健指導やフレイル予防対策に大きく貢献できるとしている。
研究は、大阪大学大学院医学系研究科先進融合医学共同研究講座(共同研究講座:ツムラ)の江頭隆一郎特任助教、萩原圭祐特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「GENE」に掲載された。
「腎虚」の概念を取り入れ4つの質問[夜間頻尿・腰痛・下肢の冷え・体のだるさ]を考案
超高齢社会を迎える日本では、介護・寝たきりの対策が急務の課題となっている。フレイルとは、介護前段階を意味し、加齢による筋力・筋肉量の低下を意味するサルコペニアなどを特徴とする「身体的フレイル」、うつや認知症などの「精神的フレイル」、孤独や閉じこもりからなる「社会的フレイル」からなり、適切な介入を行えば改善できると考えられている。
フレイルの判定には、厚生労働省の開発した25項目からなる基本チェックリスト(KCL)など、国内外でいくつかの指標が用いられているが、多くの判定指標は専門家の判断や、握力や歩行スピードなど身体能力を測定し、筋肉量を評価する体組成を用いたりする必要があるために、特定健診や日常臨床では、簡便に使用できないという課題がある。
漢方では、高齢者の諸症状を「腎虚」と呼んでいる。研究グループは、この「腎虚」の考え方を取り入れれば、新たな評価尺度を作成できるのではないかと考えた。
そこで「腎虚」の概念にもとづいた8個の候補となる質問を使い、新たな評価尺度を作成し、国内外で用いられているさまざまなフレイルの診断指標を対照に、開発尺度の妥当性を検討した。
日本で標準的に用いられるフレイルの判定指標である「KCL」に加えて、「ロコモ5」や「日本語版フレイル基準(J-CHS)」、「高齢者うつ尺度」、握力や歩行スピードなどの身体機能など、フレイルに関するデータを網羅的に採取し検討を行った。
年齢と4つの質問[夜間頻尿・腰痛・下肢の冷え・体のだるさ]で判定
効率的なフレイル対策に結びつく可能性
その結果、4つの質問[夜間頻尿・腰痛・下肢の冷え・体のだるさ]と、年齢(75歳以上)からなる質問により、KCLで判定したフレイルまたはプレフレイルの状態を、感度86.9%、特異度53.3%、陽性適中率62.8%、陰性適中率81.7%で診断できることを明らかにした。
これは、奈良県三郷町の65歳以上の高齢者433人を対象に検証したもの。吹田市の65歳以上の患者276人を対象とした検証でも、ほぼ同様の結果が得られたという。
「開発した"Japan Frailty Scale (JFS)"により、簡便にフレイルやプレフレイルに該当する人を一定の精度で判定できることが期待されます。JFSの使用により、詳細な診断による利益を受けられる可能性の高い患者を見分けることができ、効率的なフレイル対策に結びつく可能性があります」と、研究グループでは述べている。
大阪大学大学院医学系研究科先進融合医学共同研究講座
The Japan Frailty Scale is a promising screening test for frailty and pre-frailty in Japanese elderly people (Gene 2022年11月30日)