2型糖尿病の診断時の年齢が若いほど死亡リスクは上昇 診断が10年早まるごとに寿命は3~4年短縮 欧米の151万人超のデータ解析

2023.09.26
 若い年齢で2型糖尿病と診断された人ほど、全死因死亡率は上昇することが、欧米の高所得国の151万人超のデータ解析により明らかになった。

 2型糖尿病の診断が10年早まるごとに、平均余命は3~4年短くなる傾向があり、若年成人での糖尿病の発症を予防したり遅らせる介入と、危険因子の治療を強化する介入を実施する必要性が強調されている。

2型糖尿病の診断が10年早まるごとに平均余命は3~4年短縮

 若い年齢で2型糖尿病と診断された人ほど、全死因死亡率は上昇することが、高所得国の151万人超のデータを解析した研究により明らかになった。研究成果は、「Lancet Diabetes & Endocrinology」に掲載された。

 英ケンブリッジ大学などの研究グループは今回、2,310万人年の追跡期間中に死亡が記録された151万5,718人のデータを使用して、糖尿病診断時の年齢に応じた全死因死亡率の年齢調整および性別調整HRを算出した。さらに、米国と欧州の2015年からの年齢別死亡率に年齢別HRを適用して累積生存率を推定した。

 その結果、2型糖尿病のある人では、糖尿病のない人と比較して、診断時の年齢が低いことと全死因死亡の高リスクのあいだに線形の用量反応相関がみられ、性別調整ハザード比(HR)は、30~39歳で糖尿病と診断された場合は2.69[95%CI 2.43~2.97]、40~49歳では2.26[同 2.08~2.45]、50~59歳では1.84[同 1.72~1.97]、60~69歳では1.57[同 1.47~1.67]、70歳以上では1.39[同 1.29~1.51]となることが示された。

 糖尿病のある人の平均余命は、米国の死亡率を使用すると、糖尿病のある50歳の人は糖尿病のない人と比較し、30歳で診断された場合は14年短縮し、40歳で診断された場合は10年短縮し、50歳で診断された場合は6年短縮することになる。欧州の死亡率を使用すると、30歳で診断された場合は13年短縮し、40歳で診断された場合は9年短縮し、50歳で診断された場合は5年短縮する。

2型糖尿病患者の診断時の年齢別の寿命損失年数の推定
糖尿病の診断時の年齢が低いほど寿命は短くなる傾向が示された

Lancet Diabetes & Endocrinology, 2023; S2213-8587(23)00223-1

若い年齢で2型糖尿病を発症した患者の特徴は

 研究は、ケンブリッジ大学が実施しているコンソーシアム「エマージングリスク要因コラボレーション(ERFC)」の調査で明らかになったもの。このコンソーシアムは、30ヵ国以上の130件以上の前向き研究で構成され、計250万人の肥満や糖尿病、代謝性疾患などの個人参加者データ(IPD)を解析している。

 今回の研究では、英国バイオバンク(基準年の中央値は2006年、最新の追跡調査年の中央値は2020年)および19の高所得国の96件のコホート研究(基準年の中央値は1961~2007年)のデータを解析した。

 研究グループは、糖尿病の診断時の年齢が低いことと関連性が強いものとして、血管(心筋梗塞や脳卒中など)、その他の非腫瘍性死因(呼吸器疾患、神経疾患、感染症、外因性など)を挙げている。また、糖尿病に関連する平均余命の短縮は男性よりも女性の方がわずかに大きかった。

 比較的若い年齢で2型糖尿病を発症した患者は、BMIの上昇、血圧の上昇、アテローム生成促進脂質の濃度の上昇を特徴とし、血糖コントロールの悪化が早く、より悪性度の高い表現型をもつ可能性があることを指摘している。そのため、若い年齢で糖尿病を発症すると、より高齢で糖尿病を発症する患者よりも、早期死亡につながる可能性があるとしている。

 「とくに若年成人の糖尿病有病率が世界的に増加していることから、2型糖尿病の予防と発症を遅らせる介入法の開発と実施を優先して行うべきであることが示唆された」と、研究グループでは述べている。

2型糖尿病の予防と発症を遅らせる介入が必要

 今回の研究の第1の目的は、2型糖尿病の診断時の年齢に応じた余命の減少を推定することだったため、主な分析では、性別で層別化し、年齢のみで調整したHRが解析された。第2の目的は、糖尿病の年齢特有の関連性が、死亡リスクに関連する他の既知の要因とどの程度関連しているかを調査することだった。

 HRは、主に糖尿病の診断後に記録された変数(喫煙状況、BMI、収縮期血圧、総コレステロール、血糖の測定値、腎機能の測定値、炎症の測定値、教育レベル、自己申告による薬物使用)に対して逐次調整された。

 2型糖尿病の有病率は、主に肥満・栄養・身体活動に関連する生活行動と社会的要因により世界的に増加しており、2021年には世界で5億3,700万人の成人が糖尿病であると推定され、より若い年齢で診断される人が増加している。

 これまでの推定では、2型糖尿病を患う成人は、糖尿病を患っていない成人よりも、平均して6年早く死亡することが示唆されている。しかし、この平均余命の短縮が診断時の年齢に応じてどのように変化するかは不明だった。

Emerging Risk Factors Collaboration (ケンブリッジ大学公衆衛生・プライマリケア学部)
Life expectancy associated with different ages at diagnosis of type 2 diabetes in high-income countries: 23 million person-years of observation (Lancet Diabetes & Endocrinology 2023年9月11日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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