GLP-1受容体作動薬は鉄過剰症の治療にも有用である可能性 鉄の過剰蓄積は糖尿病リスクに
GLP-1受容体作動薬は鉄過剰症の治療にも有用
2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬(リラグルチド)が、鉄過剰症の治療に有用であることが、米ミシガン大学の研究で明らかになった。
研究は、米ミシガン大学保健学部の外科助教授であるNadejda Bozadjieva-Kramer氏、外科寄付講座教授でミガンシ栄養肥満研究センター所長であるRandy Seeley氏らによるもの。研究成果は、「Endocrinology」に掲載された。
遺伝性鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)は、過剰な鉄の蓄積を特徴とする遺伝性疾患。過剰な鉄はとくに肝臓に蓄積され、深刻な損傷を引き起こすおそれがあり、耐糖能障害を引き起こし、肝疾患や2型糖尿病の原因にもなるが、治療の選択肢は限られている。
研究グループは今回、モデルマウスを使用した実験により、GLP-1受容体作動薬が鉄代謝を変化させ、血液循環と肝臓内の鉄の知覚レベルを減少させることを確かめた。
「GLP-1受容体作動薬が遺伝性ヘモクロマトーシスのマウスモデルで、体重と血糖値を低下させるだけでなく、鉄分レベルを下げる効果もあることが示された」と、Bozadjieva-Kramer氏は述べている。
「GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病や肥満症の治療薬としての使用が増えているが、他の代謝関連疾患の治療にも有用である可能性がある」としている。
GLP-1受容体作動薬は体重減少と血糖調節の改善に加えて鉄過剰の軽減に有用
典型的な遺伝性ヘモクロマトーシスは、HFE(human homeostatic iron regulator)遺伝子の変異による機能喪失に起因する常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患として知られており、遺伝性鉄過剰症患者では肝臓での鉄の過剰蓄積が示され、肝臓がんを含む肝疾患のリスクが高くなる。
遺伝性鉄過剰症は、肥満、2型糖尿病、インスリン抵抗性などの代謝障害の発症リスクももたらす。
研究グループは今回、GLP-1受容体作動薬であるリラグルチドが、HFEノックアウトマウスおよび食事誘発性肥満・耐糖能障害のモデルマウスで、鉄代謝を変化させ、体重および耐糖能を低下させるという仮説を立て検証した。
全身HFE KOマウスおよび野生型対照マウスに、高脂肪食を8週間与え、リラグルチド投与群と溶媒投与群に分け、それぞれの治療薬を18週間、1日1回皮下投与した。
その結果、リラグルチドはHFE KOマウスで、対照群と同様に耐糖能と肝臓脂質マーカーを改善し、体重を減らしたが、リラグルチドはHFE KOマウスの鉄代謝を変化させ、鉄循環および鉄貯蔵のレベルを低下させることが示された。
これらの結果は、GLP-1受容体作動薬が、遺伝性鉄過剰症の体重減少と血糖調節の改善に加えて、鉄過剰を軽減するために有用である可能性を示している。
Could GLP1RA drugs lower high iron levels? (ミシガン大学 2024年9月24日)
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