歯科医院での血糖測定から内科紹介へ 糖尿病と予備群を早期発見 新たな医科歯科連携モデルを示す 山梨大学

歯科医院での血糖測定から内科紹介へ
初の医科歯科連携モデルの展開と糖尿病合併症の予防
日本では、成人の17%にあたる約2,000万人が健康診断で糖尿病や糖尿病予備群の疑いがあるとされている。糖尿病は早期発見が極めて重要だが、うち2~3割は医療機関を受診せず、適切な治療を受けていない現状がある。
とくに山梨県では糖尿病性腎症の患者数が全国ワースト15位であり、糖尿病に起因する疾患による死亡率は15.4%と全国平均13.1%より高く推移している。さらに、60歳以上の県民の75%が歯周病に罹患しているという報告もある。歯周病は血糖管理を悪化させ、高血糖は歯周病を進行させるという双方向性の関係があることが知られている。
そこで山梨大学の研究グループは、同大学と県内の10の歯科医院、6の内科が参加した多施設共同による前向き観察研究を実施した。2023年10月~2024年8月に歯科医院を受診した18歳以上の患者749人を対象に、指尖から血糖測定を行った。
血糖値が空腹時100mg/dL以上あるいは非空腹時140mg/dL以上の場合をスクリーニング陽性と定義した。スクリーニング陽性と判定された患者には、内科への紹介を行い、内科で糖尿病や糖尿病予備群の診断と治療を行った。
その結果、血糖測定を実施した749人のうち、18.6%(139人)が血糖値スクリーニング陽性と判定され、うち34人が内科を受診し、その過半数である52.9%(18人)が新たに糖尿病(8人)あるいは糖尿病予備群(10人)と診断された。
陽性群は、有意に年齢が高く、男性が多く、糖尿病の既往歴を有する割合が高く、歯周病の指標である歯肉出血率および歯槽骨吸収が高値だった。歯肉出血率、歯槽骨吸収度については、多変量調整後も有意差が維持された。

研究グループは、このモデルに対するROC曲線解析を実施し、0.71のAUC(曲線下面積)を確認した。また、血糖スクリーニング陽性の可能性を評価するためのスコアシートを作成し、各スコアに対応する感度と特異度を示した。

研究は、山梨大学大学院総合研究部医学域の土屋恭一郎教授、同大大学院の原井望氏らによるもの。研究成果は、「Journal of Diabetes Investigation (JDI)」に掲載された。
「本研究は、糖尿病関連の合併症および歯周病の有病率が全国平均を上回る山梨県の実情に即した、歯科を起点とした糖尿病のハイリスク者の早期発見と医療介入を可能にする医科歯科連携モデルの構築に寄与するものだ。今後は、本スコアの外部検証やスクリーニング・紹介体制の整備を通じて、山梨県発の医科歯科連携モデルの展開と糖尿病合併症の予防を目指す」と、研究者は述べている。
研究は、2023年度ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(地域貢献型研究支援)、2023年度地域貢献促進プロジェクトの助成を受けて実施された。
山梨大学大学院総合研究部医学域
Blood glucose screening in dental clinics as an opportunity for detection of diabetes and prediabetes: The Kyoutou Dental and Diabetes (KDD) Study (Journal of Diabetes Investigation 2025年6月6日)