GLP-1受容体作動薬は甲状腺がんリスクを増大させない DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬と比較
GLP-1RAについては非臨床試験において、げっ歯類の甲状腺C細胞腫瘍の増加が報告されており、添付文書にもその旨が記載されている。ただし、ヒトにおけるリスクの有無は明らかになっていない。Pasternak氏らは、スカンジナビア3カ国(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)の全国規模の医療・行政データを用いたコホート研究により、この点を検討した。
研究は、GLP-1RAにより治療が開始された糖尿病患者を、DPP-4阻害薬(DPP-4i)により治療が開始された糖尿病患者というアクティブコンパレータと比較するというデザインで行われ、交絡因子の影響や時間関連バイアスのリスクを最小限に抑えた。主要評価項目は、全国がん登録から把握した甲状腺がんの診断であり、傾向スコアを用いた重み付け法により交絡因子を制御し、Cox回帰分析でハザード比(HR)を推定した。追跡期間は、GLP-1RA群は3.9±3.5年、DPP-4i群は5.4±3.5年だった。
甲状腺がんの診断は、GLP-1RA群では14万5,410人中76人(1万人年当りの罹患率1.33)、DPP-4i群では29万1,667人中184人(同1.46)であり、GLP-1RAの使用は甲状腺がんのリスク増大と関連がなかった〔HR0.93(95%信頼区間0.66~1.31)、率差-0.13/1万人年(同-0.61~0.36)〕。
がんのサブタイプ別に見た場合、甲状腺乳頭がんではGLP-1RA群での罹患は53人(1万人年当りの罹患率0.93)、DPP-4i群では114人(同1.04)で、やはりGLP-1RA使用によるリスク増大を認めなかった〔HR0.92(95%信頼区間0.61~1.39)、率差-0.11/1万人年(同-0.53~0.31)〕。濾胞がん(罹患者数はGLP-1RA群16人、DPP-4i群47人)、髄様がん(同順に4人、11人)も同様にHRの95%信頼区間が1を跨いでおり、有意な関連は観察されなかった。
追加分析として、2013年以降に臨床で使用され始めたSGLT2阻害薬で治療開始された患者との比較も行われたが、HRは1.16(0.65~2.05)であり、やはり有意な関連が見られなかった。
論文の結論は、「3ヵ国の全国データを用いた大規模コホート研究から、GLP-1RAの使用は甲状腺がんのリスクの有意な増大と関連していなかった。サブタイプ別に見た場合には該当患者数が少ないため解析精度が低下したが、追加分析で結果の堅牢性が確認された」と総括されている。ただし著者らは、「本研究のみを根拠に、リスクがわずかに増大する可能性を完全に排除することはできない」とも付け加えている。
なお、一部の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。また本研究は、ノボノルディスク財団が研究資金の一部を提供し実施された。
[HealthDay News 2024年4月24日]
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