GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」が肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人に対し2型糖尿病の発症リスクを94%低下

2024.08.28
 イーライリリー・アンド・カンパニーは、肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人を対象とした、176週のSURMOUNT-1 第3相試験の結果を発表した。

 GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」の週1回投与により、プラセボ群と比較して、2型糖尿病への進展リスクが94%有意に低下した。

 同剤は投与期間中に持続的に体重を減少させ、15mg群での投与終了時の平均体重減少率は22.9%だったとしている。

 同試験は、完了済みのチルゼパチドの試験としては過去最長のもので、GIPおよびGLP-1の両受容体への薬理作用を併せもつ結果が示されたとしている。

「チルゼパチド」が肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人に対し2型糖尿病の発症リスクを低下

 イーライリリー・アンド・カンパニーは、肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人を対象とし、長期的体重管理および糖尿病への進展抑制について、GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」の週1回投与の有効性と安全性を評価した、3年間(176週)におよぶSURMOUNT-1試験の結果を発表した。

 肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人で、チルゼパチド皮下注(5mg、10mg、15mg)の週1回投与により、プラセボ群と比較して2型糖尿病への進展リスクが94%有意に低下したとしている。

 さらに、チルゼパチド投与により投与期間中を通して持続的な体重減少がみられ、肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人での、投与終了時の平均体重減少率はプラセボ群の2.1%に対して15mg群では22.9%だった。

 「肥満症は慢性疾患であり、世界で約9億人にのぼる成人が、肥満によって2型糖尿病など他の合併症のリスクを高めている。チルゼパチドは、2型糖尿病の発症リスクを94%低下させ、3年間の投与期間を通して体重を持続的に減少させた。これらのデータは、肥満症かつ糖尿病が強く疑われる人々に対する長期的治療が臨床的に利益をもたらす可能性を裏付けるものだ」と、同社では述べている。

 なお、チルゼパチドは日本では、2023年に2型糖尿病治療薬「マンジャロ皮下注」として発売され、2.5mgから15mgまでの6規格がある。肥満症治療薬としては、2023年11月に米国で承認され、「Zepbound」の製品名で発売されている。

 今回発表された適応症と安全性重要情報など一部情報は海外のもので、日本の情報ではなく、日本でのチルゼパチド皮下注の承認された適応症は「2型糖尿病」のみとしている。

 チルゼパチドは、GIP/GLP-1受容体作動薬であり、これら2種類のホルモン受容体を活性化することによって作用する。

チルゼパチド15mgの投与による平均体重減少率は22.9%

 同試験では、無作為割り付けを行った時点で、肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人に該当した1,032人を対象に、176週にわたる投与期間および投与終了後17週間の合計193週間にわたりチルゼパチドが評価された。

 全参加者を対象とした72週時点の主要解析結果は、「New England Journal of Medicine」に掲載された。

 重要な副次評価項目では、肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人で、176週までにチルゼパチド群は2型糖尿病への進展リスクをベースラインから有意に低下させた[p<0.0001、第1種過誤補正済]。

 有効性に関する統計学的推定対象については、全用量の結果を合算したチルゼパチド群で有意な結果が得られ、176週までに2型糖尿病への進展リスクがプラセボ群と比較して94%低下した。

 投与方法に関する統計学的推定対象については、全用量の結果を合算したチルゼパチド群で、176週までに2型糖尿病への進展リスクがプラセボ群と比較して93%の有意な低下を示した。

 その他の主な副次評価項目では、肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人で、チルゼパチド群(10mg、15mg)は176週までにプラセボ群と比較してベースラインから統計学的に有意に体重が減少した[p<0.001、第1種過誤補正済]。

 有効性に関する統計学的推定対象について、176週でのチルゼパチド群の平均体重減少率は、プラセボ群(2.1%)と比較して、5mg群で15.4%、10mg群で19.9%、15mg群で22.9%だった。

 投与方法に関する統計学的推定対象について、176週でのチルゼパチド群の平均体重減少率は、プラセボ群(1.3%)と比較して5mgi群で12.3%、10mg群で18.7%、15mg群で19.7%だった。

 投与終了後17週間の追跡調査期間中、チルゼパチドの投与を中止していた治験参加者では体重が再び増加し始め、2型糖尿病への進展が増加し、2型糖尿病への進展リスクはプラセボ群と比較して88%の低下にとどまりまった[p<0.0001、第1種過誤補正済]。

 193週の全試験期間でのチルゼパチドの全体的な安全性および忍容性プロファイルは、SURMOUNT-1のすでに発表されている72週時点の主要結果、および長期的体重管理に関する他のチルゼパチドの臨床試験結果と一致していた。

 もっとも多く報告された有害事象は、典型的な消化器関連のもので、その程度はおおむね軽度から中等度だった。チルゼパチド投与群の患者での主な消化器関連の有害事象は、下痢、悪心、便秘、嘔吐だった。

 今回のトップライン結果は、肥満症かつ糖尿病が強く疑われる成人での、チルゼパチド投与による2型糖尿病への進展リスクの低下と、体重減少の長期的維持についてのエビデンスが示された。

 詳細な結果は、査読付き雑誌に投稿されるほか、11月3~6日に開催予定の「ObesityWeek 2024」で発表する予定としている。

 SURMOUNT-1試験(NCT04184622)は、肥満かつ、併存疾患として高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸または心血管疾患のいずれか1つ以上を有する2型糖尿病のない成人を対象に、低カロリー食の食事療法および活動量増加の運動療法の補助療法として、チルゼパチド5mg、10mg、15mgの有効性と安全性を評価した、多施設共同、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験。

 試験開始時点で糖尿病が強く疑われる1,032人の治験参加者は、最初の72週間の試験完了後にSURMOUNT-1に登録されたまま、さらに104週間投与が継続され、チルゼパチド投与開始3年後の時点での体重への影響および2型糖尿病への進展状況の差についてプラセボ群との比較評価が行われた。

Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity (New England Journal of Medicine 2022年6月4日)

チルゼパチド (マンジャロ皮下注) 添付文書 医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

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