1型糖尿病患児の学校でのインスリン投与・血糖測定、思春期以降にトイレ利用増加 血糖管理悪化とも関連

2026.10.28
滋賀県立総合病院らの研究グループは、1型糖尿病患児が学校でインスリン投与や血糖測定といったケアをどこで行っているか、またケア実施場所と血糖管理等との関連を調査し、その結果を報告した。報告によると、11歳以降の思春期において「トイレでのケア」が出現・増加し、「保健室など別室でのケア」が減少する対比構造が明らかになった。また、トイレでのケアは血糖管理の悪化(HbA1cの上昇)と独立して関連していることも判明したという。

 1型糖尿病は、生存のために日常的なインスリン投与と頻回の血糖測定(自己管理)が不可欠である。小児期に発症した場合、一日の大半を過ごす学校において、子どもたちが適切な環境で自己管理を行えるかは、良好な血糖管理(HbA1c)を維持するうえで極めて重要となる。

 本研究は、全国の多施設共同研究組織である「小児インスリン治療研究会(第5コホート)」に登録された、学校や園に通う18歳未満の1型糖尿病患児1,105名を対象に、学校でのインスリン投与や血糖測定といったケアの実施場所の実態を調査し、ケア実施場所と血糖管理や背景要因(年齢・性別・治療法など)との関連を検討したものである。

 年齢(3~18歳)に応じたケア実施場所の割合の変化(Joinpoint解析)では、成長や学校環境の移行に伴う明確な変化が確認された。就学までは年齢とともに教室利用が増加し、小学校入学(6歳)時には40%を超えた。この年齢では、インスリンポンプや注射方法の工夫により園でケアを行わない選択をする場合もあるが、その割合は年齢とともに減少した。小学校入学以降は、年齢とともに教室利用が減少する一方で保健室・別室の利用が増加し、11歳時点で66%(ピーク)に達した。思春期・高学年(11~18歳)では、10歳までなかったトイレ利用が11歳(1.8%)から出現しはじめ、これと入れ替わるように、保健室・別室の利用率は減少傾向となり、14歳以降に急減(18歳で21%まで低下)した。さらに、高校入学となる16歳時点でトイレ利用は20%(約5人に1人)へ急増した。インスリンポンプ使用者のみに限定した解析でも、16歳時点で21%とスパイク状の増加が確認された。

 上記の結果について研究グループは、思春期・中高生年代では同年代(友人)との関係性が極めて重視されるため、ケアのために離れた保健室へ移動すると休み時間や友人との会話時間を失ってしまうことから、「移動時間をかけず素早く終わらせられる近くのトイレ」を選んでしまう行動傾向が考えられるとしている。また、思春期までの保健室利用自体が、思春期における「トイレ利用への過渡期・前段階」になっている可能性も示唆されると考察している。

 学校での主なケア実施場所は、全体で保健室・別室が52.6%、教室が36.9%、トイレが5.9%であり、「実施せず」も4.6%であった。また、トイレでケアを行う群のHbA1c平均値は8.56%で、教室(8.00%)や保健室等(7.95%)でケアを行う群と比較して有意に高かった。このことについて研究グループは、食事に合わせたインスリン注射は適切なタイミングで行う必要があるが、トイレを利用することによってそのタイミングが遅れることや、行えていない可能性があると考察している。

 また、デバイス使用によるケア場所選択の違いも見られた。インスリンポンプの使用者では、教室利用が有意に多く(オッズ比〔OR〕 4.166)、トイレ利用は有意に少なかった(OR 0.425)。CGMの使用者でも、教室利用が有意に多く(OR 1.593)、トイレ利用は有意に低かった(OR 0.401)。いずれもインスリン投与手技の簡略化(ポンプ)や血糖測定の容易さ(CGM)、プライバシー面などのメリットが大きいものと考えられた。

 性別でも選択の違いが見られ、女子では男子と比較して教室利用が少なく(OR 0.574)、トイレ利用が多い(OR 4.188)傾向を示した。周囲の目やプライバシーに対する葛藤などの心理的要因が男子よりも強いものと考えられた。

 本研究結果について研究グループは、「先進医療機器を活用した支援の重要性を示すだけでなく、特に高学年~思春期・進学期における子どもたちの心理的葛藤や友人間での居場所・時間の確保に配慮し、校内で安全かつ安心してケアを行える環境を整える必要性を強く示している」と結論付けている。

 本研究は、小児インスリン治療研究会の第5コホートにおいて、松井克之氏(滋賀県立総合病院小児内分泌代謝糖尿病科/滋賀医科大学小児科学講座 客員講師)、菊池透氏(第5コホート代表/埼玉医科大学小児科)らの共同研究チームにより実施されたもので、研究成果は2026年10月8日付けで「Diabetes Care」にオンライン掲載された。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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