糖尿病発症前よりグルカゴンが肝臓での糖新生を活性化 肝細胞からの過剰なグルコース産生を確認 大阪公立大学ら

2026.01.09
大阪公立大学と東京医療保健大学の共同研究グループは、糖尿病予備群ラットを用いてグルカゴンの働きを検証した結果、糖尿病発症前段階において肝細胞からブドウ糖が過剰に産出される仕組みを明らかにしたと発表した。

 糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気であるが、その中でも遺伝的な要因と生活習慣が複雑に絡み合う2型糖尿病が全糖尿病患者の約90%を占める。2型糖尿病進行の主要因は、血糖値を低下させる作用を持つインスリンが正常に働かなくなるインスリン抵抗性と、インスリンを分泌する膵β細胞の機能低下とされているが、近年、膵α細胞から分泌されるグルカゴンにも注目が集まっている。

 グルカゴンは空腹時などの低血糖状態の時に分泌され、肝臓での糖新生を促進して血糖値を上げるホルモン。これまで、空腹時の高グルカゴン血症や食後のグルカゴン抑制不全が肝臓での糖産生を増大させ、持続的な高血糖をもたらすことがわかっている。しかし、糖尿病症状の現れる前段階の肝臓でのインスリンやグルカゴンの異常や、その分子基盤までは十分に解明されていない。

 そこで研究グループは、ヒト2型糖尿病を自然発症するモデル動物として確立しているOLETF(Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty)ラットを用い、糖尿病発症前段階の肝細胞におけるインスリンやグルカゴンの作用による糖質の利用や産生の変化を解析した。また、OLETF ラットと対照の正常動物(遺伝的背景は同じだが病気を発症しない)である LETOラットから肝細胞を分離し、インスリンとグルカゴンが作用している状態での遺伝子発現も解析した。

 その結果、グルカゴンの作用により、糖新生に関わる遺伝子のmRNAの発現が、OLETFラット由来の肝細胞で顕著に促進した。さらに、糖新生に関わる遺伝子のmRNA発現促進に伴い、mRNAから作られるタンパク質の発現や、肝細胞からの糖産生量も増加した。また、 糖新生に関わる遺伝子のmRNAの半減期がOLETFラットの肝細胞で延長した。以上から、糖尿病の遺伝素因を有する場合、明らかな代謝異常を発症する前から、グルカ ゴンに対する肝細胞の反応性が高まることが分かった。さらに、mRNA 安定性の異常が 共存した結果、肝臓での糖新生を過剰に惹起していることも明らかになった。

 本研究成果により、糖尿病発症の遺伝素因を持つ場合、発症前段階からグルカゴンに対する過剰反応とmRNA安定性の異常が共存し、肝臓での糖新生を活発化していることが明らかになった。この結果は、糖尿病発症前に身体の変化を見つけ出し予防に繋げる、という早期診断への応用が可能になることが期待されるものである。

 研究グループは「2型糖尿病の治療のターゲットとして、インスリンだけでなく新たにグルカゴンに対する作用やmRNAの安定性を調節することが重要になると考えられる。mRNA安定性に関与する分子の同定や、これを制御する仕組みの解明を進め、グルカゴン作用やmRNA安定性を標的とした新しい糖尿病治療法の開発を目指していく」と述べ、本研究について、「本研究は糖尿病の早期発見や予防に役立ち、健康を保つだけでなく医療費の軽減にも貢献できると期待される」としている。

 本研究は、大阪公立大学大学院生活科学研究科の特任助教 出口 美輪子氏、教授 福村 智恵氏、准教授 金 東浩氏、東京医療保健大学の准教授 細田 明美氏らによって実施され、研究成果が2025年9月10日付で国際学術誌「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」にオンライン掲載された。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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