世界的に糖尿病合併症の約1割が身体活動不足に起因していると推定

身体活動不足は糖尿病合併症のリスクを高めることが知られているが、その影響を世界規模で包括的に調査した研究は乏しい。そこで研究グループは、糖尿病患者における大血管症(心血管疾患、脳卒中、冠動脈疾患、心不全)および網膜症の集団寄与割合(PAF)を国、地域、世界レベルで推定することを目的とした。
研究では、世界各地の代表的な集団ベースの前向きコホート研究および横断調査のデータを統合し、2,374,714人の成人データを解析した。対象データには、高所得の欧米諸国(11研究)、ラテンアメリカ・カリブ海地域(4研究)、高所得のアジア太平洋地域(3研究)、東および東南アジア(3研究)、サハラ以南のアフリカ(3研究)、南アジア(2研究)、中央および東ヨーロッパ(1研究)が含まれた。PAFは、調整相対リスク、症例における身体活動不足の割合、および世界中の国や地域の身体活動不足例の有病率を用いて推定された。
なお、「身体活動不足」の定義は、WHOによる「身体活動および座位行動に関するガイドライン」2020年版で推奨されている週の身体活動量に達していない状態とし、この情報が得られなかった場合は、週3回未満の身体活動しか行っていないと回答した成人を「身体活動不足」に分類した。
解析の結果、世界全体で身体活動不足に起因するPAFが最も高かったのは、脳卒中で10.2%(95%不確実性区間[UI]:5.1%〜16.6%)であった。次いで網膜症が9.7%(95%UI:4.1%〜16.5%)、心不全が7.3%(95%UI:3.1%〜12.5%)、冠動脈疾患が5.3%(95%UI:2.0%〜9.4%)、心血管疾患が5.2%(95%UI:2.2%〜8.9%)であった。地域別に見ると、高所得のアジア太平洋地域、ラテンアメリカ・カリブ海地域、中央アジア・北アフリカ・中東地域では、大血管症および網膜症に対する身体活動不足のPAFが最も大きかった。
また、社会経済的要因や人口統計学的要因による格差も確認された。すべての合併症において女性は男性よりも高いPAFを示し、特に網膜症や脳卒中、心不全において最大の男女差が観察された。さらに、国の所得レベルが高いほど、すべての合併症においてPAFが高くなっていた。その一方で、教育水準の低い成人では、すべての合併症、特に心血管疾患および冠動脈疾患においてPAFが高くなっていた。
本研究結果より、糖尿病に関連する大血管症および網膜症の症例の最大10人に1人が、身体活動不足に起因すると推定された。この身体活動不足の影響は、世界中の異なる地域や国で不均等に分布している。これらの集団において身体活動不足を軽減するための個別化された介入策を講じることが、糖尿病合併症による健康への影響の軽減に寄与する可能性がある。



