糖尿病網膜症をAIで99%以上の精度でスクリーニング 日常診療で眼科検査が可能 米国内分泌学会
糖尿病網膜症のスクリーニングにおける、AIを用いた網膜画像解析システムの有用性が、米国内分泌学会(ENDO2025、7月12~15日、サンフランシスコ)で報告された。判定精度は99%以上に達するという。米テキサス大学健康科学センターのJansi Rani Sethuraj氏らが発表した。

Sethuraj氏によると、この画像解析システムは「Simple Mobile AI Retina Tracker(SMART)」と呼ばれるもので、「最新のディープラーニングアルゴリズムを用いて、スマートフォンなどのインターネット対応デバイス上で、網膜画像を迅速かつ正確に分析する」という。
同氏はこのSMARTの具体的なメリットを、「眼科医であれば、患者のスクリーニングを効率良く行うことができるようになる。プライマリケア医であれば、日常の診療の中に定期的な眼科検査を組み込むことが可能となり、眼科の医療体制が十分に整っていない地域でも、糖尿病網膜症のリスクを高い精度で評価する機会を提供できるようになる」と解説している。
糖尿病網膜症は、眼球内の血管から血液が漏れ出したりすることで、網膜にダメージが及ぶ病気。研究者らは、研究背景の説明の中で、「糖尿病網膜症は世界中で1億人以上が罹患している予防可能な失明原因である」と述べている。
SMARTの開発に際して研究者らはまず、6大陸にわたるさまざまな患者群から数千枚の網膜画像を収集し、AIモデルをトレーニングした。続いて、別の網膜画像のデータセットを用いて、構築されたAIの性能をテストした。
その結果、1画像あたり1秒未満の処理速度で、ほぼ完全に糖尿病網膜症を検出できることが確認された。さらに、糖尿病網膜症と他の眼疾患の鑑別もできることも明らかになった。
本研究に指導的立場で関わった、医療AI技術開発のための組織であるAIM DOCTORのElangovan Krishnan氏は、「誰もが利用可能なモバイル技術を通して、眼科医療をより身近なものにするこのツールにより、世界中で数十億人ものスクリーニングを可能にし、糖尿病網膜症による視力喪失の抑制につなげられる。そればかりでなく、このツールは、現在までの医療提供システムを変革する可能性も秘めている」と述べている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[HealthDay News 2025年7月16日]
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