SGLT2阻害薬「フォシーガ」の第3相DAPA-CKD試験サブ解析 CKD治療での心腎および死亡率に対するベネフィットが認められる
地域または心血管系併用薬使用の有無にかかわらず一貫した腎臓および心血管アウトカムを示す
フォシーガは、1日1回投与のSGLT2阻害薬。同剤は米国で、成人2型糖尿病での血糖コントロール改善のための食事および運動療法の補助療法として承認され、また、第3相DECLARE-TIMI 58 CVアウトカム試験の結果にもとづき、標準治療への追加療法で、成人2型糖尿病での心不全入院および心血管死のリスク低下の適応を取得している。また、同剤は第3相DAPA-HF、第3相DAPA-CKD試験の結果にもとづき、成人の左室駆出率が低下した心不全の治療薬、およびCKDの治療薬として承認された。
DAPA-CKD試験は、2型糖尿病合併の有無に関わらず、CKDステージの2~4、かつ、アルブミン尿の増加が確認された4,304例を対象に、フォシーガ10mg投与による有効性と安全性をプラセボと比較検討した国際多施設共同無作為化二重盲検第3相試験。
フォシーガ は1日1回、標準治療と併用された。複合主要評価項目は、腎機能の悪化もしくは死亡(eGFRの50%以上の持続的低下、ESKDへの進行、心血管または腎不全による死亡)リスクだった。副次評価項目は、腎機能の複合評価項目(eGFRの50%以上の持続的低下、ESKDへの進行、腎不全による死亡)、心血管死もしくは心不全による入院、および全死因死亡のいずれかの初発までの期間だった。試験は日本を含む21ヵ国で実施され、結果は「New England Journal of Medicine」に掲載された。
DAPA-CKD試験での腎臓、心血管(CV)および死亡率のアウトカムに関する地域別の解析データから、CKD患者でのフォシーガの有益性は、北米、ラテンアメリカ、ヨーロッパおよびアジアを含む事前に規定された地理的地域間でも同程度であることが示された。
複合主要評価項目である推定糸球体濾過量(eGFR、腎機能の重要な指標)の50%以上の持続的低下、末期腎疾患(ESKD)の発症および、心血管または腎不全による死亡の相対リスク減少率は、4つの地域で一貫して30~49%だった(プラセボと比較したフォシーガの絶対リスク減少率は3.3~8.0%)。地域間での不均一性は認められなかった(p=0.77)。
また、別のサブ解析では、ベースラインの心血管系併用薬がCKD患者でのフォシーガの効果に影響を与えるかが評価された。その結果、さまざまな心血管系併用薬使用の有無にかかわらず、CKD患者での腎臓、心血管評価項目および死亡率に対するフォシーガの明らかな有益性が示された2。
具体的には、主要複合アウトカムの最初のイベント発生までの時間(eGFRの50%以上の持続的低下、ESKDへの進行、心血管または腎不全による死亡)でのフォシーガの効果は、プラセボとの比較で、ベースライン時にアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用していた患者(ハザード比[HR]0.61、95%信頼区間[CI]0.51-0.74)と使用していない患者(HR0.54、95%CI0.20-1.46; 交互作用のp=0.69)で同程度だった。また、利尿薬、カルシウム拮抗薬およびβ遮断薬など、解析された他の心血管系併用薬使用の有無にかかわらず、フォシーガの一貫した効果が示された。
DAPA-CKD試験の事前に規定された解析で、フォシーガ投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けられた患者のeGFRスロープは、フォシーガ群では-2.88mL/min/1.73m²/年(eGFRスロープ、平均値[標準誤差]=0.11)、プラセボ群では-3.83mL/min/1.73m²/年(標準誤差=0.12)となり、フォシーガはCKD患者での年間のeGFR低下の程度を有意に低減した(中央値2.3年)。
また、新たなデータから、治療開始後早期のeGFRの低下は、フォシーガで治療した患者により多いことが示された。この早期のeGFRの変化は、フォシーガの作用機序と関連しており、糸球体での好ましい血行動態変化を反映していると考えられる。なお、低下の程度にかかわらず、この早期でのeGFRの低下は、重篤な有害事象、有害事象による治療中止、腎臓関連事象または体液量減少事象のリスク増加とは関連していなかった。
DAPA-CKD試験の治験運営委員会の共同代表者であるオランダのグロニンゲン大学医療センターのHiddo L. Heerspink教授は次のように述べている。
「第3相DAPA-CKD試験のサブ解析結果は、CKDの治療でのフォシーガの有効性と安全性に関するエビデンスを強力に裏付けています。フォシーガは、疾患の進行を遅らせることで現在の標準治療を大きく変え得る重要な治療選択肢です。つまり、より早期の診断が患者のアウトカム改善の重要な要素となります」。
一方、観察研究であるREVEAL-CKD研究の新たなデータによると、ステージ3のCKD患者のうち、診断された割合はフランスではわずか4.5%、日本では7.9%に過ぎない。
REVEAL-CKDは多国籍観察研究であり、本研究の目標は、診断されていないステージ3のCKDの有病率および予測因子について、これまででもっとも信頼できる評価を提供することだ。
REVEAL-CKDは11ヵ国(米国、フランス、日本、中国、ドイツ、イタリア、スペイン、カナダ、オーストラリア、英国およびブラジル)について評価し、推定100万例の患者に関するデータを収集する。結果は、償還請求や電子カルテを含む国別データベースから抽出される。同試験は2020年12月に開始され、2021年12月に完了する予定だ。
Dapagliflozin in patients with chronic kidney disease(New England Journal of Medicine 2020年10月8日)
DAPA-CKD: A regional analysis of kidney and cardiovascular outcomes(米国腎臓学会(ASN)腎臓週間2021)
Effects of dapagliflozin in patients with chronic kidney disease, with and without diabetes, by use and non-use of cardiovascular medications: DAPA-CKD Trial(米国腎臓学会(ASN)腎臓週間2021)
The effect of dapagliflozin on rate of kidney function decline in patients with chronic kidney disease: a pre-specified analysis from the DAPA-CKD trial(米国腎臓学会(ASN)腎臓週間2021)
Correlates and consequences of an acute decline in estimated glomerular filtration rate in response to the SGLT2 inhibitor dapagliflozin(米国腎臓学会(ASN)腎臓週間2021)