日本人超高齢者におけるSGLT2阻害薬の投与中止リスク、年齢よりもフレイルと低BMIが関連

SGLT2阻害薬は心腎保護効果が近年確立されており、糖尿病、心不全、慢性腎臓病の治療薬として広く使用されている。人口の高齢化に伴い、75歳以上の高齢者に処方される機会も増加しているが、特にフレイルや低BMIを伴う超高齢のアジア人集団における忍容性や薬剤特異的な有害事象に関するデータは限られていた。そこで研究グループは、75歳以上の日本人におけるSGLT2阻害薬特異的な有害事象による投与中止の発生率を明らかにし、関連する患者レベルのリスク因子を特定することを目的として研究を実施した。
本研究は、多施設後ろ向きコホート研究として実施され、宮崎県内の6施設において2014年1月1日から2024年4月1日の間にSGLT2阻害薬を新規に開始した75歳以上の成人616名を対象とした。投与開始後180日間の電子カルテを後ろ向きに調査し、SGLT2阻害薬特異的な有害事象として、尿路・生殖器感染症、体液量減少、急性腎機能低下(30%超のeGFR低下)、および糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)または高浸透圧高血糖症候群(HHS)による投与中止の有無と理由を評価した。
対象患者616名の平均年齢は81.3歳であり、85歳以上が23.2%を占めた。平均BMIは24.0で、33.2%の患者がBMI22未満であった。また、Clinical Frailty Scale(CFS)スコア5以上(軽度から中等度以上のフレイル)の患者は11.4%であった。基礎疾患として、糖尿病が78.6%、慢性心不全が59.3%、慢性腎臓病(eGFR60未満)が68.7%に認められた。
解析の結果、180日間のSGLT2阻害薬特異的な有害事象に関連した投与中止の累積発生率は9.1%であった。中止の理由となったイベントの内訳は、尿路・生殖器感染症が23件、体液量減少が19件、急性腎機能低下が8件、DKAまたはHHSが5件であった。
Kaplan-Meier曲線を用いた解析では、CFSスコア5以上の患者はCFSスコア5未満の患者と比較して、有害事象関連の投与中止発生率が有意に高かった(27.1% vs. 7.2%、P<0.001)。同様に、BMI22未満の患者はBMI22以上の患者よりも(16.5% vs. 6.1%、P<0.001)、85歳以上の患者は75〜84歳の患者よりも(16.2% vs. 7.3%、P=0.008)、それぞれ投与中止の発生率が有意に高かった。一方で、eGFR45未満と45以上の群間や、糖尿病の有無による群間では、発生率に有意差は認められなかった。性別、心不全の有無、利尿薬の併用、飲酒習慣、喫煙歴においても有意差はみられなかった。
多変量Cox比例ハザードモデルを用いた解析では、CFSスコア5以上(HR 4.67、95%CI 2.31~9.47、P<0.001)およびBMI22未満(HR 2.53、95%CI 1.38~4.62、P=0.003)が、SGLT2阻害薬特異的な有害事象による投与中止の独立したリスク因子として特定された。対照的に、年齢、腎機能障害、性別、糖尿病の有無、慢性心不全、利尿薬の併用は、投与中止リスクと統計的に有意な関連を示さなかった。
なお、180日間の観察期間を通じて投与を継続できた382名の患者においては、ベースラインから180日目にかけて、BMI、HbA1c、AST、ALT、eGFR、BNPの有意な低下が認められた。
本研究では、75歳以上の高齢者においてSGLT2阻害薬は概ね良好な忍容性を示し、フレイルと低BMIが有害事象による投与中止の主要なリスク因子であった。一方で、年齢については投与中止リスクとの独立した関連は認められなかった。著者らは、高齢者にSGLT2阻害薬の処方を検討する際には、年齢そのものよりも生理的予備能の評価を組み込むことが有用である可能性があると結論付けている。






