SGLT2阻害薬はメトホルミンよりも心不全・心筋梗塞の入院リスクが低い 心血管アウトカムを比較

2022.06.02
SGLT2iとメトホルミンの心血管アウトカムの比較

 2型糖尿病患者に対するファーストライン治療として、メトホルミンを用いた場合とSGLT2阻害薬(SGLT2i)を用いた場合とで、心血管アウトカムを比較した研究結果が「Annals of Internal Medicine」に5月24日掲載された。心不全入院リスクなどはSGLT2iの方が有意に低いことが分かった。米ハーバード大学とブリガム・アンド・ウィメンズ病院に所属しているHoJin Shin氏らの研究によるもの。

 米国では長らく、メトホルミンが2型糖尿病のファーストライン治療薬として推奨されていたが、近年は心血管疾患(CVD)イベントハイリスク患者などでは、SGLT2iも第一選択薬として推奨されるようになった。ただし、CVDイベントリスクに対するメトホルミンとSGLT2iの抑制効果を比較した研究は少ない。これを背景としてShin氏らは、メトホルミンまたはSGLT2iでファーストライン治療を行った成人2型糖尿病患者のCVDアウトカムを比較する研究を行った。

 研究には、米国の高齢者対象公的医療保険であるメディケアと大規模民間医療保険の医療費請求データベースを用いた。コホート登録前に血糖降下薬が処方されておらず、2013年4月~2020年3月にメトホルミンまたはSGLT2i(カナグリフロジン、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン)の処方が開始されていた18歳以上(メディケアに関しては65歳以上)の2型糖尿病患者を登録。データベースごとに傾向スコアにより患者背景をマッチさせた上で、2:1の割合で患者を割り当てたデータセットを作成した。

 アウトカムは、心筋梗塞・脳卒中(虚血性・出血性)による入院または全死亡、および、心不全入院と全死亡という複合エンドポイント、ならびに、それらを単独のエンドポイントとして発生リスクを比較。また、性器感染症を含む安全性の評価も行った。

 メトホルミンファースト群の患者が1万7,226人、SGLT2iファースト群の患者が8,613人抽出された。平均12ヵ月の追跡で、心筋梗塞・脳卒中入院または全死亡の複合エンドポイント発生率は両群同等だった〔ハザード比(HR)0.96(95%信頼区間0.77~1.19)〕。一方、心不全入院と全死亡に関してはSGLT2iファースト群の方が有意に低リスクだった〔HR0.80(同0.66~0.97)〕。また、エンドポイントを個別に比較すると、心不全入院〔HR0.78(同0.63~0.97)〕、心筋梗塞による入院〔HR0.70(同0.48~1.00)〕も、SGLT2iファースト群の方が低リスクだった。

 安全性に関しては、SGLT2iファースト群は性器感染症のリスクが有意に高かった〔HR2.19(同1.91~2.51)〕。その他の安全性に関する評価項目は、有意な群間差がなかった。

 著者らは、「われわれの研究結果は、CVDアウトカム改善を意図したファーストライン治療薬としてSGLT2iを用いることを支持するものと言える。ただし、確固たるエビデンスを得るには無作為化比較試験が必要とされる」と述べている。

[HealthDay News 2021年5月24日]

Copyright ©2022 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料