SGLT2阻害薬はメトホルミンよりも心不全・心筋梗塞の入院リスクが低い 心血管アウトカムを比較
米国では長らく、メトホルミンが2型糖尿病のファーストライン治療薬として推奨されていたが、近年は心血管疾患(CVD)イベントハイリスク患者などでは、SGLT2iも第一選択薬として推奨されるようになった。ただし、CVDイベントリスクに対するメトホルミンとSGLT2iの抑制効果を比較した研究は少ない。これを背景としてShin氏らは、メトホルミンまたはSGLT2iでファーストライン治療を行った成人2型糖尿病患者のCVDアウトカムを比較する研究を行った。
研究には、米国の高齢者対象公的医療保険であるメディケアと大規模民間医療保険の医療費請求データベースを用いた。コホート登録前に血糖降下薬が処方されておらず、2013年4月~2020年3月にメトホルミンまたはSGLT2i(カナグリフロジン、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン)の処方が開始されていた18歳以上(メディケアに関しては65歳以上)の2型糖尿病患者を登録。データベースごとに傾向スコアにより患者背景をマッチさせた上で、2:1の割合で患者を割り当てたデータセットを作成した。
アウトカムは、心筋梗塞・脳卒中(虚血性・出血性)による入院または全死亡、および、心不全入院と全死亡という複合エンドポイント、ならびに、それらを単独のエンドポイントとして発生リスクを比較。また、性器感染症を含む安全性の評価も行った。
メトホルミンファースト群の患者が1万7,226人、SGLT2iファースト群の患者が8,613人抽出された。平均12ヵ月の追跡で、心筋梗塞・脳卒中入院または全死亡の複合エンドポイント発生率は両群同等だった〔ハザード比(HR)0.96(95%信頼区間0.77~1.19)〕。一方、心不全入院と全死亡に関してはSGLT2iファースト群の方が有意に低リスクだった〔HR0.80(同0.66~0.97)〕。また、エンドポイントを個別に比較すると、心不全入院〔HR0.78(同0.63~0.97)〕、心筋梗塞による入院〔HR0.70(同0.48~1.00)〕も、SGLT2iファースト群の方が低リスクだった。
安全性に関しては、SGLT2iファースト群は性器感染症のリスクが有意に高かった〔HR2.19(同1.91~2.51)〕。その他の安全性に関する評価項目は、有意な群間差がなかった。
著者らは、「われわれの研究結果は、CVDアウトカム改善を意図したファーストライン治療薬としてSGLT2iを用いることを支持するものと言える。ただし、確固たるエビデンスを得るには無作為化比較試験が必要とされる」と述べている。
[HealthDay News 2021年5月24日]
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