GLP-1受容体作動薬・SGLT-2阻害薬・DPP-4阻害薬の最新情報 米国内分泌学会(ENDO 2024)ダイジェスト(1)
2024.06.12
米国内分泌学会年次学術集会2024(ENDO 2024)が、2024年6月1日~4日にボストン コンベンション センターで開催された。糖尿病関連の発表のダイジェストをご紹介する。
- GLP-1受容体作動薬の過剰使用や"万能薬"としての使用に対し注意喚起
- GLP-1受容体作動薬がアルコール使用障害(AUD)の発症と再発を半分に減少
- SGLT2阻害剤が投与された2型糖尿病患者の血糖調節でのインスリンとグルカゴンの役割を解明
- GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬が2型糖尿病とMASLDが併存した患者の心血管イベントや肝イベントを抑制
- GLP-1受容体作動薬が2型糖尿病・肥満症患者の急性膵炎のリスクを低下
- GIP/GLP-1受容体作動薬が肥満関連の疾患を抱える患者でも大幅な体重減少を示す
GLP-1受容体作動薬がアルコール使用障害(AUD)の発症と再発を半分に減少 |
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GLP-1受容体作動薬による治療は、アルコールの乱用や依存症の発生率や再発の減少に関連しており、アルコール使用障害(AUD)に対する治療薬として潜在的な可能性があることが、ケース ウェスタン リザーブ大学医学部が、8万3,825人の肥満患者の電子医療記録(EHR)を調査した研究で示された。 セマグルチドで治療された患者は、他の抗肥満薬で治療された患者と比較して、翌年のAUDの発症と再発が50~56%減少した。「GLP-1受容体作動薬は、AUDを治療するための新しい治療法となる可能性がある。AUDに対する臨床的効果を裏付けるためにランダム化比較試験が必要とされる」と、同大学生物医学情報学部のRong Xu教授は指摘している。 |
Associations of semaglutide with incidence and recurrence of alcohol use disorder in real-world population (Nature Communications 2024年5月28日) |
SGLT2阻害剤が投与された2型糖尿病患者の血糖調節でのインスリンとグルカゴンの役割を解明 |
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SGLT2阻害剤による治療はインスリン効果と血糖濃度の関係を変化させ、グルカゴンの作用がそうした薬剤で治療された患者間の血糖値の変動の原因となっている可能性があることが、神戸大学や東京大学などによる研究で示された。 研究グループは、SGLT-2阻害薬「ダパグリフロジン」(フォシーガ)の投与を受けた2型糖尿病患者68人を対象に、Hyperinsulinemic-euglycemic clamp法と経口ブドウ糖負荷試験を実施し、さまざまなレベルの耐糖能を有する、SGLT2阻害剤が投与されていない120人の患者を対象とした試験から得たデータと対照して解析。 GIモデル(グルコース・インスリン)あるいは またはGIGモデル(グルコース・インスリン・グルカゴン)のフィードバック ループによる数学的モデルを構築した。 |
Mathematical Models of the Effect of Glucagon on Glycemia in Individuals With Type 2 Diabetes Treated With Dapagliflozin (Journal of the Endocrine Society 2024年4月8日) |
GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬が2型糖尿病とMASLDが併存した患者の心血管イベントや肝イベントを抑制 |
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GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬は、他の糖尿病治療薬に比べて、心臓疾患や重篤な肝合併症などの主要な心血管イベントのリスクを低下させることが、2013~2020年のメディケアの診療データと、2013~2022年の米国の医療保険データベースを検討した研究で示された。 研究グループは、GLP-1受容体作動薬あるいはSGLT-2阻害薬の投与を開始した2型糖尿病および代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)のある患者を含む2件の解析を実施。両剤のいずれかを使用した患者は、DPP-4阻害薬を使用した患者に比べ心血管イベントが少なく、GLP-1受容体作動薬を使用した患者は重篤な肝イベントが減少した 「GLP-1受容体とSGLT-2阻害剤が2型糖尿病とMASLDが併存している患者にとって、他の糖尿病治療薬よりも有益である可能性が示唆された」と、ブリガム アンド ウィメンズ病院およびハーバード大学医学部薬剤疫学・経済学部門のAlexander Kutz氏は述べている。 |
GLP-1受容体作動薬が2型糖尿病・肥満症患者の急性膵炎のリスクを低下 |
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GLP-1受容体作動薬は、肥満症および2型糖尿病の患者の急性膵炎の再発リスクを低下させる可能性があることが、米国など15ヵ国の約1億2,700万人の患者の情報が含まれる大規模データベースであるTriNetXの解析で明らかに。うち63万8,501人が急性膵炎の病歴が特定された。 急性膵炎の再発リスクは、SGLT2阻害薬との比較では、GLP-1受容体作動薬群では15.2%で、SGLT2阻害薬群の24.0%より低く、DPP-4阻害薬との比較では、GLP-1受容体作動薬群では14.4%で、SGLT2阻害薬群の23.3%より低かった。 SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬を使用していない患者との比較では、GLP-1受容体作動薬群では14.5%であったのに対し、対照群では51.6%と大きな差が出た。 「膵炎の病歴がある患者の薬物療法では、病状を悪化させる潜在的なリスクを考慮する必要があるが、今回の研究では、GLP-1受容体作動薬が他の薬剤に比べ、肥満と2型糖尿病のある患者の急性膵炎の再発リスクを軽減し、安全性についての懸念は少ないことが示された」と、バッファロー大学医学・生物医学部内分泌・糖尿病・代謝部門のMahmoud Nassar氏は述べている。 |
GIP/GLP-1受容体作動薬が肥満関連の疾患を抱える患者でも大幅な体重減少を示す |
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GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(マンジャロ)は、肥満に関連する複数の疾患を抱える患者でも、大幅な体重減少をもたらすことが、アルバート アインシュタイン医科大学の研究で明らかに。計4,726人のBMIが30以上の肥満症、あるいはBMIが27以上の過体重の患者を対象とした4件の試験の結果を解析(うち938人は2型糖尿病を併発)。 肥満に関連した疾患の数[他の病状がない、疾患が1つ、疾患が2つ以上]によって分類した結果、肥満関連疾患の存在に関係なく、チルゼパチド群ではプラセボ群に比較して、より大きな体重減少が示された。 「患者が複数の医学的問題を抱えている場合、減量は困難だと考えられていたが、チルゼパチドは体重減少を示した。予想通り、高齢の患者や肥満症の病歴の長い患者は肥満に関連する疾患を多く抱えていた」と、アルバート アインシュタイン医科大学およびモンテフィオーレ医療センターのSriram Machineni氏は述べている。 |
Diabetes: ENDO 2024 Press Conference
[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]