減量介入で肥満関連がんのリスクが低下

肥満とT2DMはいずれもがんリスクと関連があり、2012年時点で世界のがん症例の約6%は肥満およびT2DMに起因するものと推定されている。近年、肥満またはT2DMの治療薬としてGLP-1RAが普及してきており、また高度肥満に対するBSも積極的に行われるようになってきている。しかし、それらによる減量が、肥満関連がんのリスク抑制につながっているのか否かは、これまで明らかにされていなかった。
この研究は、世界各地の医療機関の電子医療記録を統合したリアルワールドのデータベース(TriNetX)を用いた、後ろ向きコホート研究として実施された。2005年6月~2025年6月にGLP-1RA(セマグルチド、チルゼパチド)、またはBSによる治療を受けた、肥満を伴うT2DM成人患者を抽出。DPP-4阻害薬による治療を受けていた患者群から、傾向スコアマッチングにより背景因子の一致する対照群を治療法ごとに1対1で割り当て、計三つのコホートを作成。肥満関連がんの発症リスクをCox回帰分析により比較した。
セマグルチドの検証コホートには6万4,178組のペアが組み込まれ、平均911日追跡した解析の結果、肥満関連がんの有意なリスク低下が認められた(ハザード比〔HR〕0.88〔95%信頼区間0.82~0.95〕)。がんの種別に見た場合、大腸がん(HR0.80〔同0.67~0.97〕)、肝臓がん(HR0.75〔0.60~0.95〕)、膵臓がん(HR0.76〔0.60~0.96〕)のリスク低下と関連していた。
チルゼパチドの検証コホートには1万9,682組のペアが組み込まれ、平均435日追跡した解析の結果、全体的には有意なリスク低下が示されなかった(HR0.84〔0.69~1.01〕)。ただし、がんの種別に見ると、卵巣がん(HR0.31〔0.10~0.95〕)のリスク低下と関連していた。
BSの検証コホートには9,642組のペアが組み込まれ、平均1,746日追跡した解析の結果、肥満関連がんの有意なリスク低下が認められた(HR0.85〔0.74~0.98〕)。がんの種別に見ると、肝臓がん(HR0.56〔0.32~0.97〕)、子宮がん(HR0.59〔0.38~0.90〕)のリスク低下と関連していた。一方、胃噴門がん(HR10.54〔1.35~82.38〕)および食道がん(HR4.78〔1.04~21.87〕)のリスクは有意に高かった。
Ipaye氏は、「われわれの研究は数万人という大規模なデータを解析した結果であり、リアルワールドに存在する多数の患者に対する減量介入ががん予防につながるという、潜在的なメリットの確信が得られた」と述べている。なお、数人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。
[HealthDay News 2025年10月8日]
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