日本全国の2型糖尿病患者の治療状況 専門医と非専門医の差異が明らかに J-DOME

2025.10.30

 日本全国の2型糖尿病の治療状況について、J-DOME(日本医師会かかりつけ医診療データベース研究事業)のレジストリを用いて、地域格差や専門医と非専門医の差異を検討した研究結果がこの度報告された。

 解析の結果、各臨床パラメータに地域間での有意な差は認められなかったが、専門医療機関では非専門医療機関に比べ、定期的な眼科受診率、尿中アルブミン検査実施率が低いといった有意な差が認められた。一方で、HbA1c値は非専門医療機関で高かった。

 本研究は、令和4年度および6年度厚生労働科学研究(研究代表者:野田光彦)として実施されたもので、研究の詳細は、日本医師会発行の英文医学誌『JMA Journal』に2025年10月15日付けで掲載された。

2型糖尿病有病率の高い日本
全国の治療状況の把握と地域格差の是正が不可欠

 2019年の国民健康・栄養調査では、男性の19.7%、女性の10.8%が糖尿病の疑いがあり、これは日本人の約7分の1に相当する。わが国の糖尿病の有病率の高さを踏まえると、地域格差を含め、全国における糖尿病医療の現状を把握することは重要である。「健康日本21(第三次)」でも「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が目標として掲げられているが、これを目指すためには糖尿病をはじめとする生活習慣病の重症化予防と、その管理における地域格差の是正が不可欠である。

 また糖尿病の有病率が高いにもかかわらず、日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医はわずか7,150名にとどまっており(2025年1月6日時点)、多くの糖尿病患者が非専門医による診療を受けていることが示唆される。そのため、専門医と非専門医の診療における潜在的な違いを調査することが重要である。

 そこで本研究は、日本全国の2型糖尿病患者の治療状況と地域差を把握するため、J-DOME(日本医師会かかりつけ医診療データベース研究事業)のレジストリを用いて、地域格差や糖尿病専門医と非専門医の差異について検討された。

2型糖尿病患者の臨床パラメータ
地域格差は見られないが、専門医と非専門医との間で差異が

 本横断研究は、2022年度(登録期間:2022年4月~2023年5月)にJ-DOMEへ患者登録を行った医療機関を対象とした。また、糖尿病専門医療機関と非専門医療機関の比較において、専門医療機関を「日本糖尿病学会が認定する糖尿病専門医の資格を有する医師が診療を行う医療機関」と定義した。臨床パラメータとしては、HbA1c、収縮期血圧、拡張期血圧、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド、定期的な眼科受診率および尿中アルブミン検査実施率が解析された。

 116の医療機関、2,938人の2型糖尿病患者が解析対象となった。各地域の比較では、HbA1cの全国平均は6.96%(標準偏差[SD]:0.46)、血圧は129.7/73.0mmHg(SD:6.1/5.7mmHg)であり、有意な差は認められなかった。LDLコレステロールほか、残りの各臨床パラメータについても同様に有意な地域差は認められなかった。

 一方、専門医療機関と非専門医療機関の比較では、平均HbA1c値は、専門医療機関(7.13% [SD:0.41])の方が非専門医療機関(6.86% [SD:0.46]、p = 0.001)よりも有意に高かった。収縮期血圧、拡張期血圧、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリドには、専門施設と非専門施設間で有意差は認められなかった。平均眼科受診率は、専門医療機関(78.5% [SD:19.5])の方が非専門医療機関(53.9% [SD:33.8]、p < 0.001)よりも有意に高かった。同様に、平均尿中アルブミン検査実施率は、専門医療機関(62.5% [SD:35.5])の方が非専門医療機関(33.5% [SD:39.0]、p < 0.001)よりも有意に高かった。

今後は多職種連携の評価や、地域特性を考慮した分析を行うことも検討

 今回の解析では、分析したどの地域でも全国平均からの大きな逸脱は見られず、日本全国で糖尿病治療の水準が比較的均一であることが示された。一方、専門医療機関と非専門医療機関との比較では、一部の臨床パラメータで有意な差が認められた。

 J-DOMEのレジストリには、処方薬の種類、食事療法や運動療法の導入有無など、治療に関する項目が限られている。筆者らは、これらの項目については、レジストリ全体を通して、専門医療機関と非専門医療機関の間にわずかな差異しか見られず、今回示された臨床パラメータの差異の理由を明らかにできなかったとし、今後のプロトコルでは多職種連携についても評価すべきとしている。

 また筆者らは、今後の研究では、大都市圏、地方都市、農村部や過疎地域といった地域特性を考慮した分析を行うことを検討すべきとしている。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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