妊娠前にGLP-1受容体作動薬の使用を中止すると有害事象のリスクが高まる

妊娠中はGLP-1RAの投与を避け、血糖管理にはインスリン製剤を用いるとされているが、投与中止によって体重増加や妊娠転帰に負の影響を及ぼす可能性も考えられる。Maya氏らはこの臨床疑問を検討するため、妊娠前に投与されていたGLP-1RAが妊娠初期までに中止されていた妊婦の体重増加と妊娠転帰を、同薬が投与されていなかった対照群と比較するという研究を行った。
この研究は、2016年6月~2025年3月に出産した14万9,790人の単胎妊娠のデータを用いた後ろ向きコホート研究として実施された。妊娠の3年前から妊娠後90日までにGLP-1RAが処方されていた患者を「曝露群」とし、同薬の処方歴のない妊婦から傾向スコアでマッチングさせた妊婦を1対3の割合で抽出し「非曝露群」として割り付けた。主要評価項目は妊娠中の体重増加であり、副次評価項目は、妊娠時の過剰な体重増加や妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群の発症などとした。
背景因子がマッチする1,792人(曝露群448人、非曝露群1,344人)が解析対象となった。曝露群は平均年齢34.0±4.7歳、妊娠前BMI36.1±6.5であり、84%が肥満、23%が糖尿病の既往歴を有していた。
妊娠中の体重増加は曝露群が13.7±9.2kg、非曝露群は10.5±8.0kgであり、有意な群間差が認められた(3.3kg〔95%信頼区間2.3~4.2〕)。また曝露群は、妊娠中に過剰な体重増加を来した割合が高く(同順に65対49%、リスク比〔RR〕1.32〔1.19~1.47〕)、児の出生体重が大きかった(在胎週数・性別平均体重のパーセンタイルが58.4対54.8%、群間差3.6パーセントポイント〔0.2~6.9〕)。加えて曝露群は、早産(17対13%、RR1.34〔1.06~1.69〕)、妊娠糖尿病(20対15%、RR1.30〔1.01~1.68〕)、妊娠高血圧症候群(46対36%、RR1.29〔1.12~1.49〕)のリスクが高かった。帝王切開の割合、出生体重が在胎週数に比して大きい/小さい児(LGA/SGA児)の割合、児の出生身長に有意差は認められなかった。
論文の上席著者である同院のCamille E. Powe氏は、「GLP-1RAを使用することのメリットと、妊娠に伴い同薬の使用を中断することに関連するリスクのバランスについて、さらなる研究が必要だ。また、同薬の中止による妊娠中の体重増加を抑制し、妊娠転帰への影響を軽減する手段を見いだすための研究も求められる」と述べている。
なお、数人の著者が医療テクノロジー関連企業または出版関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。
[HealthDay News 2025年11月25日]
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