非肥満者では糖尿病発症前に体重が減少する傾向を発見 富山大学

東アジア系人種はヨーロッパ系人種に比べて、より低い体重でも糖尿病を発症しやすいことが知られている。その背景には、両者間で異なる糖尿病発症メカニズムが関与していると考えられている。そこで研究グループは、日本人における肥満者(BMI≧25 kg/m2)と非肥満者(BMI<25 kg/m2)それぞれの体重変化の特徴と糖尿病発症との関連を検討した。
本研究は、一般財団法人北陸予防医学協会(富山県)の特定健診データを用いた後ろ向き観察コホート研究。対象者は9,260名で、観察開始から3年以内に糖尿病を発症した者を除外し、最終的に259名が新規に糖尿病を発症した。
解析の結果、肥満群では糖尿病発症前にBMIが増加し、その後やや低下する傾向が見られた。一方、非肥満群では糖尿病発症前にBMIが減少し、その後安定する傾向が見られた。特に、糖尿病発症前のBMI変化が年間−0.15 kg/m2以下の人は、+0.15 kg/m2以上の人よりも有意に多く認められた(p=0.003)。
本研究結果より、非肥満者における体重減少が糖尿病発症の前兆である可能性が示された。これまで体重増加とともに発症すると考えられてきた糖尿病だが、研究グループは体重減少=健康改善」という認識では見逃されるリスク層が存在することを意味するとし、糖尿病の診断基準には達していない高血糖の非肥満者について、糖尿病発症の高リスク群として早期に介入することが重要であるとの考えを示した。特に、減量を目的としない、血糖管理に焦点を当てた生活習慣指導が求められるとしている。
研究グループは「今後は前向き研究として、インスリン分泌能を評価し、個別化医療のさらなる進展を図りたい。また、本研究成果を地域社会へ還元し、肥満を伴わない糖尿病の発症予防を目指して、最適な食事療法・運動療法の検討を進めていく予定」と述べている。




