2型糖尿病患者における口腔ケアが24時間の血糖管理と関連

糖尿病と歯周病は密接に関係しており、歯周病治療によってHbA1cが低下することが報告されている。しかし、日常的な口腔ケア習慣と血糖管理の関連性については十分に解明されていない。近年普及したCGMにより、一日の詳細な血糖変動が把握できるようになり、またTIR(血糖が目標域70〜180mg/dLに入った時間の割合)、GMI(CGM値からHbA1cに換算した値)などの新しい指標も登場している。特にTIRは、糖尿病合併症の発症・進展や、死亡率と関連する重要な指標として注目されている。
そこで本研究では、2型糖尿病患者の日常的な口腔ケア習慣とTIR等のCGM指標を含む血糖管理指標との関連性、さらにその作用機序として炎症の関与について検討した。15本以上の天然歯を有し、クリニックに通院する2型糖尿病患者104名を対象とした横断的研究で、2020年10月から2021年12月まで実施された。アンケート調査により、歯科通院状況、歯みがき回数、フロスや歯間ブラシによる歯間清掃頻度、天然歯数などを聴取した。また、高感度CRP、IL-6、TNF-αなどの炎症マーカーを測定し、CGMを14日間実施した。
参加者の定期歯科受診率は61.2%、また1日2回以上の歯みがき実施率78.4%、週1回以上の歯間清掃実施率70.6%、平均歯数25.0±3.6本であった。歯科受診の頻度が高いほど、HbA1c・空腹時血糖値・BMIが低く、歯みがき頻度が高いほどBMI・高感度CRP・尿中アルブミン/クレアチニン比が低かった。また、歯間清掃頻度が高いほど空腹時血糖・GMI・BMI・3つの炎症マーカーが低く、TIRが高くなり、全身性炎症との潜在的な関連性が示唆された。
週3回以上の歯間清掃習慣がある人では、空腹時血糖値やHbA1cが低く、CGM指標においてもTIRが高く、GMIが低い値を示した。24時間のCGM測定値でも明確な差が認められ、性別・年齢調整後の解析でもそれらの項目には有意差が保持された。また、歯数が20本以上ある人と20本未満の人の比較では、24時間を通じてのCGMのグルコース値に明確な差が認められ、歯が20本以上ある人ではGMIが低かった。
週3回以上の歯間清掃習慣は、各種炎症マーカーによる調整後でも、TIRやGMIの臨床目標達成と有意に関連し、炎症以外にその関係をつなぐ機序がある可能性が示された。
本研究は横断的研究のため因果関係の特定に限界はあるが、日常的な歯間清掃や歯の保持が糖尿病管理において重要な役割を果たす可能性が示された。サンスターグループは「令和6年の診療報酬改定では、医科において生活習慣病管理料の算定時に歯科受診勧奨が条件として組み込まれ、歯科では歯周病安定期治療のハイリスク加算が糖尿病の病態によって算定されるなど、医科歯科連携の重要性が制度面でも明確に位置づけられた」と述べている。





