糖尿病に合併する脂肪肝とミリスチン酸の関連性を解明 大阪大学ら

2025.11.04

 大阪大学、九州大学の共同研究グループは、糖尿病に脂肪肝を合併すると血液中の脂質プロフィールが変化し、特に中性脂肪を構成する脂肪酸としてミリスチン酸が増加すること、またこの現象が糖尿病治療により改善することを明らかにしたと発表した。

 本研究成果は、ミリスチン酸が脂肪肝における病態を反映するバイオマーカーや治療標的となる可能性を示すもので、脂肪肝の病態解明の一助として期待される。

 糖尿病の合併症として特に多いのが脂肪肝であるが、その評価には肝生検といった体に負担のかかる検査や画像検査が用いられてきた。近年、新たな検査手法として血液中の脂質の網羅的解析が注目されているが、糖尿病患者が脂肪肝を合併した際の血液中の脂質プロフィールが十分に分かっていないことや技術的課題から、一部の脂質の解析に留まるものや、脂質の構成成分に関しては解析できないものがほとんどであった。

 本研究では、九州大学の馬場健史氏らが開発した「超臨界流体クロマトグラフィー」を用いた。本測定法では各脂質の構成脂肪酸の組み合わせまで明らかにすることが可能。大阪大学医学部附属病院に通院している糖尿病患者の血液中に含まれる約350種類の脂質を網羅的に、構成成分の違いまで詳細に測定した。そして、脂肪肝の合併有無によって、どのような血液中の脂質プロフィールの違いが認められるかを評価した。

 結果、脂肪肝を有する糖尿病患者の血液中の脂質プロフィールは、脂肪肝のない患者と大きく異なっており、特に中性脂肪、とりわけ構成成分としてミリスチン酸(FA 14:0)を含む中性脂肪が多くなっていることがわかった。

 そこで研究グループは中性脂肪の構成成分に着目し、糖尿病の入院治療を行った前後でどのように変化するか、また脂肪肝合併の有無で影響が異なるかを調べた。その結果、脂肪肝のない患者では、治療により中性脂肪の構成脂肪酸の多くが減少傾向を示すものの、統計学的に有意なものはなかった。一方、脂肪肝を有する患者では中性脂肪の構成脂肪酸の多くが減少し、その中でもミリスチン酸が最も大きく減少することがわかった。

 研究グループは本研究結果について、「糖尿病に脂肪肝を合併した際の血中脂質プロフィールの変化の詳細を初めて明らかにしたものであり、血液中の中性脂肪を構成するミリスチン酸は脂肪肝における病態を反映するバイオマーカーや治療標的になる可能性が示された。本研究が糖尿病に合併する脂肪肝の病態解明の一助となることが期待される」としている。

 本研究は、大阪大学大学院医学系研究科の細江重郎氏、片上直人氏、下村伊一郎氏、九州大学生体防御医学研究所附属高深度オミクスサイエンスセンターの馬場健史氏らの共同研究グループによって実施され、研究成果が2025年8月15日付けで「Diabetes」に掲載された。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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