【米国糖尿病学会2023】心不全および2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬の効果を検証 他

2023.07.06
第83回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会

 臨床現場での2型糖尿病および心不全(HF)患者に対するSGLT2阻害薬の効果を検証した試験結果が発表され、プラセボと比較し、心血管系有害事象の3点MACEの有意な減少、および心血管疾患による入院(HHF)の早期減少につながることが示された。

 また、集中治療を受けている患者は、慢性心不全(CHF)をともなう糖尿病を併発していることが多いが、そうした患者に対するメトホルミンの使用は死亡率の低下と関連していることが発表された。

 さらに、2型糖尿病患者は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の処方後1年以内に、心不全(HF)で入院するリスクが高くなることが、33万1,189人の2型糖尿病患者を対象とした調査で示された。

臨床現場での2型糖尿病および心不全(HF)患者に対するSGLT2阻害薬の効果を検証
心血管系有害事象の3点MACEの有意な減少 心血管疾患による入院(HHF)の早期減少

 臨床現場での2型糖尿病および心不全(HF)患者に対するSGLT2阻害薬の効果を検証した試験結果が発表され、プラセボと比較し、心血管系有害事象の3点MACEの有意な減少、および心血管疾患による入院(HHF)の早期減少につながることが示された。

 研究は、ブリガム アンド ウィメンズ病院およびハーバード大学医学部薬剤疫学・経済学部のdouard L Fu氏らによるもの。研究成果は、「European Heart Journal」に掲載された。

 「EMAP-REG Outcome」試験は、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンの2型糖尿病患者の心不全に関連した転帰に対するSGLT2阻害薬の効果を検証したランダム化比較試験で、2015年に開始された。

 SGLT2阻害薬について、これまで駆出率が維持された(HFpEF)患者、駆出率が低下した(HFrEF)患者、あるいは糖尿病の有無に関わらず心不全患者を対象に試験が行われており、左心室駆出率に関係なく、心不全患者の基礎療法での重要な選択肢となっている。

 試験には、2013年4月~2019年12月にメディケア請求データを使用し、2型糖尿病と心不全の両方を発症した65歳以上計5万9,605人(女性49.8%)の患者が登録された。試験では、DPP-4阻害薬シタグリプチンと比較した、SGLT2阻害薬の有効性が評価した。

 DPP-4阻害薬を開始した群は1万6,253人、SGLT2阻害薬を開始した群は4万3,352人が登録され、主要評価項目は、365日間の追跡期間での全死因死亡率と心不全の悪化の組み合わせとした。

 その結果、SGLT2阻害薬の開始はDPP-4阻害薬と比較し、主要複合アウトカムのリスクの低下と関連していた[調整ハザード比(HR) 0.72、CI 0.67~0.77]。調整後のHRは、全死因死亡率で0.70[95%CI 0.63~0.78]、心不全による入院で0.64[同0.58~0.70]だった。

 さらに、3種類SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジン)間で、駆出率の維持または低下による心不全への影響に関して差はみられなかった。

メトホルミンの使用は糖尿病と心不全のICU患者の死亡率低下に関連

 集中治療を受けている患者は、慢性心不全(CHF)をともなう糖尿病を併発していることが多いが、そうした患者に対するメトホルミンの使用は死亡率の低下と関連していることが、中国の重慶医科大学のChenyang Duan氏らによって発表された。研究成果は「Cardiovascular Innovations and Applications」に掲載された。

 研究グループは、米国の集中治療用医療情報マート(MIMIC)データベースを、2型糖尿病および慢性心不全の患者を特定するために使用。メトホルミンを投与された患者と投与されなかった患者を比較し、傾向スコアマッチング分析と多変数COX回帰比例ハザードモデルにより、90日の死亡率を検討した。

2型糖尿病および慢性心不全の患者の計2,153人(メトホルミン群180人、非メトホルミン群1,973人)のデータを解析したところ、90日死亡率はメトホルミン群で5.5%、非メトホルミン群で30.5%だった。

 傾向スコアマッチング分析では、メトホルミンの使用は90日死亡率の71%の低下と関連していた(ハザード比0.29、95%CI 0.14~0.59、P<0.001)。

2型糖尿病患者でNSAIDs処方後1年以内に心不全の入院リスクが上昇

 2型糖尿病患者は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の処方後1年以内に、心不全(HF)で入院するリスクが高くなることが、33万1,189人の2型糖尿病患者を対象とした調査で示された。

 2型糖尿病患者では、NSAIDが処方されるのは一般的だが、その使用が短期間であっても、心不全による初回入院のリスクの上昇に関連している可能性が示された。

 コペンハーゲン大学病院心臓病科のAnders Holt氏らによるもの。研究成果は、「Journal of the American College of Cardiology」に掲載された。

 研究グループは、デンマーク全国医療登録簿のデータから、1998年~2021年に2型糖尿病と診断された、または糖尿病治療を開始した18歳~100歳の患者33万1,189人(年齢中央値62歳、女性44.2%)のデータを解析。追跡調査は診断の120日後に始まり、心不全による入院・死亡まで追跡された。

 NSAIDsであるセレコキシブ、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセンの処方が請求された患者のうち、追跡開始から1年以内に最大4回の処方箋が請求された患者の割合を報告。症例クロスオーバー分析では、最初の心不全入院前28日以内にNSAIDsの処方の請求について調査した。

 最初の1年間に、16%が1回以上のNSAIDs処方が請求され、3%が1年以内に3回以上の処方が請求された。

 解析した結果、NSAIDsの短期使用は心不全入院のリスク増加と関連していた(オッズ比1.43、95%CI 1.27~1.63)。とくに年齢が80歳以上のサブグループで顕著だった(同1.78、95%CI 1.39~2.28)。

 心不全入院のリスク増加は、0~1種類の血糖降下薬で治療され、HbA1c値が上昇した患者で高く(オッズ比1.68、95%CI 1.00~2.88)、NSAIDsの使用歴のなかつた患者でも高かった(同2.71、95%CI 1.78〜4.23)。

Sodium–glucose cotransporter 2 inhibitors vs. sitagliptin in heart failure and type 2 diabetes: an observational cohort study (European Heart Journal 2023年6月1日)
Metformin Treatment is Associated with Mortality in Patients with Type 2 Diabetes and Chronic Heart Failure in the Intensive Care Unit: A Retrospective Cohort Study (Cardiovascular Innovations and Applications. 2023年6月24日)
Heart Failure Following Anti-Inflammatory Medications in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus (Journal of the American College of Cardiology 2023年4月)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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