2型糖尿病の薬物療法の診療ガイドライン2024年版を公開 2剤目はSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬 米国内科学会
メトホルミンにSGLT2阻害薬あるいはGLP-1受容体作動薬を追加
米国内科学会(ACP)は、2型糖尿病の成人患者に対する薬物療法の臨床上の推奨事項を示した診療ガイドライン「Newer Pharmacologic Treatments in Adults With Type 2 Diabetes」を公開した。前回の改訂は2017年で、2024年版が最新の内容になる。詳細は、「Annals of Internal Medicine」に掲載された。
診療ガイドラインでは、2型糖尿病で血糖コントロールが不十分な患者に対して、食事や運動などの生活指導の介入を行うとともに、メトホルミンに追加する2剤目以降として、SGLT2阻害薬あるいはGLP-1受容体作動薬を推奨している。
全死因死亡、主要な心血管イベント、慢性腎臓病(CKD)の進行、うっ血性心不全のある患者の入院リスクを軽減するために、SGLT2阻害薬の使用を推奨し、全死因死亡、主要な心血管イベント、脳卒中のリスクを軽減するために、GLP-1受容体作動薬の使用を推奨している。
ただし、米国人対象ではメトホルミンにDPP-4阻害薬を追加しても罹患率や全死因死亡率は低下しないことを示したエビデンスがあるため、メトホルミン投与と生活習慣改善により血糖コントロールが十分に改善しない2型糖尿病患者へのDPP-4阻害薬の追加は推奨していない。
体重が10%以上減少した患者のデータは不足
この診療ガイドラインは、2型糖尿病に対する薬物療法の利点、有害性、費用対効果についての新しい体系的なレビューにもとづき制作されており、GRADE(推奨事項、アセスメント、発展性、評価の等級付け)によるアプローチを使用し評価しており、全死因死亡、重大な心血管イベント、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、CKDの病気、重篤な有害事象、重度の低血糖症のアウトカムを優先しているという。
なお、10%以上の体重減少を達成した患者の割合は、優先すべきアウトカムではあるものの、ネットワークメタ解析ができる十分なデータはまだないため、ACPはGRADEで評価しなかったとしている。
血糖コントロールは一般的な治療目標となっているが、診療ガイドラインで取り上げた治療法は、2型糖尿病の成人の血糖コントロールを改善することは明らかであり、その治療が心血管疾患などのアウトカムも改善するかなど、臨床上の利益の付加を得られるかに焦点をあてているとしている。
治療の費用対効果も個別に考慮 低コストの選択肢も検討
また改訂版では、それぞれの患者でニーズや状況は異なることを重視し、意思決定の共有は重要ではあるものの、医師が2型糖尿病の治療計画について話し合うときには、患者の年齢、併存疾患、個人の好み、費用対効果などの特性について、個別化を考慮することを推奨している。
たとえば、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は後発薬のない新薬であり、比較的高価であることも鑑み、全死亡や罹患率の低下などの効果は劣っているものの、患者によっては他の低コストの選択肢もあることを考慮するべきだとしている。
Editorialを寄稿したデューク大学総合内科部門のFatima Syed氏は、「SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、とくに肥満のある2型糖尿病患者に対しては、血糖コントロールと体重減少の大きな効果を期待できる利点はあるものの、高コストであることが障壁になりうる。患者によっては、糖尿病の初期治療での薬物療法の費用対効果について、慎重に検討する必要があるだろう」と述べている。
Newer Pharmacologic Treatments in Adults With Type 2 Diabetes: A Clinical Guideline From the American College of Physicians (Annals of Internal Medicine 2024年4月19日)
ACP issues clinical recommendations for newer pharmacological treatments of adults with Type 2 diabetes (米国内科学会 2024年4月19日)
Newer Pharmacologic Treatments in Adults With Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Network Meta-analysis for the American College of Physicians (Annals of Internal Medicine 2024年4月19日)
Cost-Effectiveness of Newer Pharmacologic Treatments in Adults With Type 2 Diabetes: A Systematic Review of Cost-Effectiveness Studies for the American College of Physicians (Annals of Internal Medicine 2024年4月19日)