SGLT2阻害薬が新型コロナの有害転帰を減少 GLP-1受容体作動薬やメトホルミンより優位
糖尿病患者はCOVID-19罹患時の重症化リスクが高いことが、パンデミックの初期から明らかになっている。また、血糖管理に用いられている薬剤によって重症化リスクが異なる可能性があることも指摘されており、例えばメトホルミンはリスク抑制に働くのではないかとする研究結果などの報告がある。ただし、すべての血糖降下薬の重症化リスクへの影響を比較検討した研究は行われていない。これを背景としてZhu氏らは、異なる複数の類似している臨床試験で得られた結果を統合し、統計学的手法を用いて介入効果を比較する、ネットワークメタ解析による検討を行った。
PubMed、Embase、Cochrane Central Register、Web of Science、ClinicalTrials.govに2022年9月5日までに収載された論文を検索対象とするシステマティックレビューを実施。COVID-19発症の少なくとも14日前までに血糖降下薬による治療が開始されていた患者が含まれている無作為化比較試験を検索した。ヒットした1,802件の報告について、2人の研究者が独立して採否を検討。意見の不一致は3人目の研究者を加えた討議により解決した。最終的に31件を採用。それらに含まれる研究対象者数は合計368万9,010人だった。
主要評価項目を、ICU入室、機械的人工換気、院内死亡で構成される複合エンドポイントとするネットワークメタ解析を施行。その結果、SGLT-2i群の複合エンドポイント発生リスクは、インスリン群〔対数オッズ比(logOR)0.91〕やDPP-4阻害薬群(logOR0.61)、インスリン分泌促進薬群(同0.37)、α-GI群(同0.50)に比べて有意に低かった。SGLT-2i以外では、チアゾリジン群がインスリン群に比較して有意に低リスクだった(同0.61)。インスリンはSGLT-2iやチアゾリジン以外に、メトホルミン、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬などに比べて有意にハイリスクだった。
累積順位曲線下面積(surface under the cumulative ranking curve;SUCRA)で順位付けした場合、SGLT-2iは有害転帰の確率が最も低く(6%)、続いてGLP-1受容体作動薬(25%)であり、3位がメトホルミン(28%)、4位はチアゾリジン(43%)だった。SGLT-2iを除外した感度分析からも、同様の結果が得られた。
著者らは、「われわれの研究結果は、SGLT-2iが処方されている糖尿病患者はほかの血糖降下薬で治療されている患者に比較して、COVID-19に罹患した際の有害転帰の発生率が低いことを示唆している」と結論付けるとともに、「これには同薬が血糖降下作用だけでなく、体重減少や血圧・脂質代謝改善作用を有することが関係している可能性が考えられる」と述べている。
[HealthDay News 2022年12月7日]
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