糖尿病患者のメトホルミン中止は認知症リスクの上昇と関連 認知症の診断が1.2倍に上昇
メトホルミンの使用中止が認知症の発生率の上昇と関連
長期のメトホルミン療法が想定された糖尿病患者で、早期にメトホルミンの服用を中止すると、加齢にともなう思考や記憶の障害などの認知症のリスクが高まる可能性があることが、米カリフォルニア大学校疫学統計学部のScott Zimmerman氏などによる研究で示唆された。研究結果は、「JAMA Network Open」に掲載された。
メトホルミンはもっとも多く処方されている血糖降下薬で、これまでメトホルミンの使用が認知症の発生率の低下と関連していることが報告されているが、この関連性は疾患の重症度や処方によって異なる。
一方で、推算糸球体濾過量(eGFR)の上昇による腎機能障害の兆候が示された患者や、メトホルミンに関連するそれほど深刻ではない副作用により、メトホルミン療法を中止する糖尿病症例がある。
研究グループは今回、米国の大手健康保険システムであるカイザー パーマネンテ ノーザン カリフォルニアに登録された、メトホルミン開始時に腎疾患と診断されていなかったメトホルミン使用者を対象に、2021年11月~2023年9月まで追跡し、認知症については1996年の電子健康記録の導入から2020年まで追跡して調査した。
最終的なデータは、メトホルミン療法の継続者2万9,126人(46.6%が女性)と、中止者1万2,220人(46.2%が女性、メトホルミン処方開始時の平均年齢は59.4歳)だった。
その結果、メトホルミン療法の早期に中止した患者は、継続した患者と比較し、認知症の診断リスクが1.21倍に上昇した[ハザード比 1.21、95%信頼区間 1.12~1.30]。
媒介分析では、HbA1c値あるいはインスリン使用の変化による寄与は認められず[0.00年、95%信頼区間 -0.02~ 0.02年]、メトホルミン療法の終了5年後のインスリン使用による寄与も認められなかった[0.07年、同 0.02~0.13年]。
このことは、メトホルミン療法の中止と認知症との関連性が、HbA1c値の変化やインスリン使用から独立してあることを示唆しているとしている。
「メトホルミンには広範なベネフィットがあるため、2型糖尿病の治療では第一選択薬として使用されることが多く、禁忌でない限りメトホルミン療法を継続することが推奨されている。また今回の研究は、メトホルミンが加齢にともなう思考や記憶の障害などを防ぐことができるかを明らかにすることを目的としたものではない」と、研究者は説明している。
「メトホルミン療法の中止が認知症の発生率の増加と関連していることを示した今回の発見は、成人糖尿病の臨床治療で重要な意味をもつ可能性があり、メトホルミンが認知症リスクの低下と関連していることを示す新たなエビデンスを提供するものだ」としている。
「2型糖尿病患者では、メトホルミンや他の血糖降下薬の投与と、生活改善の介入による効果的な管理により、認知症のリスクを軽減し、脳を認知機能の低下から守ることができる可能性がある。メトホルミンを服用していて中止を望んでいる患者は、まず主治医に相談するべきだ」と付け加えている。
Metformin cessation and dementia incidence (JAMA Network 2023年10月25日)
Metformin cessation and dementia incidence (JAMA Network 2023年10月25日)