糖尿病学会より注意喚起 PI3Kα阻害剤・リソバリシブ使用時の高血糖発現

リソバリシブメシル酸塩水和物(商品名:ハイツエキシン)は、がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞癌に対する経口PI3Kα阻害剤として、2026年3月23日に国内で承認された。本剤は、PI3KαのATP結合部位に結合し、キナーゼ活性を阻害することで、PI3Kシグナル伝達経路の下流分子であるAKTのリン酸化を阻害すること等により、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられているが、その薬剤特性から高血糖が特徴的な副作用として認められていた。
同系統の薬剤であるアルペリシブ(本邦未承認)においても、高血糖発現率が63.7%と非常に高く(空腹時血糖250mg/dL以上の高血糖32.7%)、PI3K阻害による高血糖がon-target effect(薬理作用そのものによる副作用)であることが示されている。実際に、リソバリシブの臨床試験における副作用としての高血糖発現率は89.2%と非常に高く、尿中ケトン体陽性3例、ケトアシドーシス1例およびケトーシス1例も報告されている。高血糖発現例のうち96.4%で血糖降下薬が開始されており、インスリン治療を要した症例も43.4%と高率であった。
とくに注意すべき点として、リソバリシブによる高血糖は極めて速やかに発現することが挙げられている。高血糖発現日の中央値(期間)は4.0日(1〜85日)と報告されており、これは学会がすでに注意喚起を発出しているAKT阻害薬カピバセルチブと比較しても短いという。同剤の適正使用ガイドには、参考情報として治験時の検査スケジュール(空腹時血糖、HbA1c)が記載されているが、学会は投与開始直後の高血糖発現を確実に捉えるため、必要に応じて血糖自己測定(SMBG)または持続グルコースモニタリング(CGM)の使用を検討するよう呼びかけている。また、同剤の半減期は12.8〜25.2時間と比較的長く、高血糖が遷延する可能性にも注意して血糖モニタリングを実施する必要があるとしている。
空腹時血糖について、140mg/dL以上を認めた場合は血糖降下薬の使用を考慮するとしている。リソバリシブの臨床試験において使用された血糖降下薬はメトホルミンが中心であったが(84.3%)、同剤は消化器系の副作用の発現率が高いため、 状況に応じてSGLT2阻害薬等の他の薬剤の使用を考慮する。空腹時血糖250mg/dL以上の高血糖を認めた場合は、原則として糖尿病を専門とする医師に連絡し、インスリン治療を含めた対応を検討するとしている。
リソバリシブの臨床試験では、糖尿病患者、空腹時血糖値>110mg/dL、またはHbA1c>基準値上限の患者は除外されていたといい、このことから学会は、インスリン分泌が高度に低下した症例へのリソバリシブ投与の際には、投与初日からの綿密な血糖値等のモニタリング、食欲不振などの消化器症状を含めた問診および診察、ならびに原疾患治療にあたる医師と糖尿病を専門とする医師(不在の場合は担当内科医)の適切な連携が重要であると呼びかけている。


